Khristos voskres Op.26-6 Pjatnadtsat’ romansov |
キリストはよみがえられり 15のロマンス |
Khristos voskres pojut vo khrame; No grustno mne... dusha molchit. Mir polon krov’ju i slezami, I etot gimn pred altarjami Tak oskorbitel’no zvuchit. Kogda-b On byl mezh nas i videl, Chego dostig nash slavnyj vek, Kak brata brat voznenavidel, Kak opozoren chelovek, I esli b zdes’, v blestjashchem khrame Khristos voskres On uslykhal, Kakimi b gor’kimi slezami, Pered tolpoj On,zarydal! |
「キリストはよみがえられり」と 教会では歌っている だが私は悲しい 魂は沈黙する この世界は多くの血と涙に満ちて 祭壇の前の賛美歌も 怒りに満ちて聞こえるのだ もしキリストが我らのもとにあり見られたならば 我らがこの偉大な世紀に生み出したものを 兄弟が兄弟を憎みあい 人間たちが辱め合うのを見たならば そしてもしもここ この壮麗な寺院において 「キリストはよみがえられり」と 聞かれたならば どんな苦い涙を 群集たちの前で 彼は流されるのであろうか! |
今からおよそ100年前の1906年に書かれたこの曲、歌われている世界のひどい状況はそのまま21世紀にも引き継がれてしまいました。季節は春、復活祭(イースター)の喜びに沸くロシアの教会、「キリストはよみがえられり(Khristos voskres)」というのはクリスマスにおける「メリークリスマス」みたいな復活祭の挨拶の文句なのだそうで、それを知るとこの歌の内容の重たさがよく分かります。弾けるような喜びが周囲に爆発しているために、それとの対比で現実の世の中の悲惨さが一層突き刺さってくるのです。
地味なメロディのせいか、あるいはバスのための歌であるせいかあまり聴けることの多くない作品ですが、ラフマニノフの歌曲の中でも指折りの傑作でしょう。ボリス・クリストフ(EMI)やセルゲイ・レイフェルクス(Chandos)の名唱がCDでは聴けます。
( 2007.12.30 藤井宏行 )