TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Smert’   Op.145-10  
  Sjuita na slova Mikelandzhelo Buonarroti
死  
     ミケランジェロの詩による組曲

詩: ミケランジェロ (Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni,1475-1564) イタリア
    Rime 295 Di morte certo,ma non già dell' ora

曲: ショスタコーヴィチ (Dimitry Shostakovich,1906-1975) ロシア   歌詞言語: イタリア語


Di morte certo,ma non già dell' ora;
la vita è breve,e poco me n'avanza;
diletta al senso è non però la stanza
a l'alma,che mi priega pur ch' i' mora.

Il mondo è cieco,e 'l tristo esempio ancora
vince e sommerge ogni prefetta usanza;
spent' è la luce,e seco ogni baldanza;
trionfa il falso,e 'l ver non surge fora.

Deh quando fie,Signor,quel che s'aspetta
per chi ti crede? Ch' ogni troppo indugio
tronca la speme,el' alma fa mortale.

Che val che tanto lume altrui prometta,
s' anzi vien morte,e senz' alcun refugio
ferma per sempre in che stato altri assale?
死は確実に来る、だがまだその時ではない
人生は短く、私にはあとわずかしか残されていない
五感には心地よいが 魂にとってはあまりに狭い
この肉体の死が早かりしことを祈っている

この世は盲目 悲しき出来事のみが支配するし
良き伝統を打ち壊す
消え行くは灯り すべての勇気と一緒に
虚偽が勝ち誇り 真実は見えぬ

ああ いつなのですか、主よ、来るべき時
御身を信じている者の時は? あまりに遅いようですと
希望は打ち砕かれ、魂は死んでしまうというのに

光明を人々に約束されても何のことがありましょう
死がやってきて 逃げ場もないままに
われらの魂を捕まえ、攻め続けるというのでは?


「私にはあとわずかしか残されていない」とありますようにミケランジェロ晩年の詩、1556年の作だそうです。当時80歳を超えるというのは大変な長命であったのではないかと思いますが、それでも死までに彼はまだあと8年もの年を残していました。
この曲では歌曲集第1曲「真実」の冒頭に聴かれたコラールが再現してきます。音楽的にも非常に似た雰囲気。壮年期に湧き上がった不正義への怒りは、死を前にするまで歳を取ってもなお途絶えることはない、いまだに虚偽の世は続いているということなのでしょう。
この曲で面白いのはメロディにショスタコーヴィチ自身の交響曲第14番の第10楽章「詩人の死」からの引用があることです。こちらの詩も詩人(ミケランジェロ)が死のことを歌っているわけですから非常に筋が通った引用でもあるのですね。また同じ10番目ということもありますし、歌曲集自体もこの交響曲と同じ11の部分からなっていることもあって両者の類似性を論じている人もいるようです。

( 2007.12.16 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ