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Desire in Spring    
 
春の願い  
    

詩: レドヴィッジ (Francis Ledwidge,1891-1917) アイルランド
      

曲: ガーニー (Ivor Gurney,1890-1937) イギリス   歌詞言語: 英語


I love the cradle songs the mothers sing
In lonely places when the twilight drops,
The slow endearing melodies that bring
Sleep to the weeping lids; and,when she stops,
I love the roadside birds upon the tops
Of dusty hedges in a world of Spring.

And when the sunny rain drips from the edge
Of midday wind,and meadows lean one way,
And a long whisper passes thro' the sedge,
Beside the broken water let me stay,
While these old airs upon my memory play,
And silent changes colour up the hedge.

母親たちの歌うゆりかごの歌が素敵だ
たそがれが迫る寂しい場所で
ゆっくりした優しい調べを聴くと
子供たちの涙に濡れた瞼も閉じてくる
母たちが歌うのをやめたときには
春満開の生け垣の上で歌う鳥の声が美しい

お天気雨の雫が
昼間の風の中、草原に降り注ぎ
長いささやきがスゲを通って渡る
さざなみの立つ湖のほとりに私は座っていたい
この古い調べが記憶の中で鳴り響く間に
生け垣はひそやかに彩りを変えている

イギリス歌曲の中でも、触れるとこわれそうな繊細な味わいを求めれば、このガーニーはそれに答えてくれる作曲家でしょう。民謡のような素朴な味わいにも関わらず、そこから紡ぎ出される音楽は若者の傷つきやすい心の吐露のようで、ぐっと来るものがあります。
若き日の思いを魅力的に表現した人といえば同時代イギリスにはバターワースがおりますが、彼の作った歌曲は青春のほろ苦い思いを噛み締めるような感じ、かたやガーニーの方はというと感受性が強い余りに引きこもりがちとなった青年のモノローグという感じで、このスタイルにハマれる人と今ひとつ何だか良く分からない、という人の両極端に好みが分かれるような気がします。
私もようやく最近この人の良さがじわじわと分かってきましたが、初めは何とも捕らえどころのない歌だなと思っていたものでした。
CDはラクソンのバリトン(Chandos)が一番入手が楽だと思います。
彼の美しい、朗々とした声で聴くのも魅力的ではあるのですが、このスタイルはバターワースの歌曲に対しては絶品なのに対し、ちょっとガーニーの作品には違和感があります。
アンソニー・ロルフ・ジョンソンの明るいテナーの歌(IMP)も若さ溢れる素敵な解釈。ただこれも同じ理由でちょっと違う感じです。
ガーニーのスタイルにしっくり来るのは、繊細だけれどもちょっと弱々しい雰囲気のあるパートリッジのテナー(ETCETERA)、ささやくような声の揺らぎが実にたまりません。
歌のスタイルからしてボストリッジにもはまりそうな歌曲ではあるのですが、残念ながら彼のこの曲の録音はまだないようです。
(彼の歌唱でガーニーの歌曲では「眠り」とあともう1曲録音がありますがこれが実に良いですので、早くこれを含めた他の曲も期待したいところですが)

( 2004.05.01 藤井宏行 )


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