Oh! Susanna |
おお!スザンナ |
I come from Alabama with my Banjo on my knee I'se gwine to Lou'siana my true lub for to see. It rain'd all night de day I left,de wedder it was dry; The sun so hot I froze to def -- Susanna,don't you cry. (Chorus) Oh! Susanna,do not cry for me; I come from Alabama, Wid my Banjo on my knee. I jump'd aboard the telegraph and trabbled down de ribber, De lectrick fluid magnified,and kill'd five hundred Nigga. De bulgine bust and de hoss ran off,I really thought I'd die; I shut my eyes to hold my bref--Susanna don't you cry. (Chorus) Oh! Susanna,do not cry for me; I come from Alabama, Wid my Banjo on my knee. I had a dream de udder night,when ebry ting was still; I thought I saw Susanna dear,coming down de hill, De buckwheat cake was in her mouf,de tear was in her eye, I says,I'se coming from de souf,--Susanna don't you cry. (Chorus) Oh! Susanna,do not cry for me; I come from Alabama, Wid my Banjo on my knee. |
俺はアラバマからやってきた バンジョーを膝に乗せ 俺の大事な恋人に会いにルイジアナ目指してくんだ 俺の出かけた日は一晩中雨が降って、天気はカラッカラ お日様は暑くて凍え死にそうだったぜ――スザンナ、泣くんじゃねえぞ (コーラス) おお、スザンナ、泣くんじゃねえぞ 俺はアラバマからやってきた バンジョーを膝に 俺は電信柱に飛び乗って 川を下って旅したぜ 電流を目いっぱい上げたんで、五百人の黒ん坊を殺しちまった 機関車は爆発するわ 馬は逃げ出すわでマジ死ぬかと思ったぜ 俺は息を止めて目を閉じる ――スザンナ、泣くんじゃねえぞ (コーラス) おお、スザンナ、泣くんじゃねえぞ 俺はアラバマからやってきた バンジョーを膝に ある晩俺は夢をみた、みんな寝静まった晩に 愛しのスザンナを夢でみたんだ、丘を降りてくるあの娘を あの娘の口ん中はそば粉ケーキで一杯、目には涙を浮かべてた なあおい、俺は南から行くからな――スザンナ、泣くんじゃねえぞ (コーラス) おお、スザンナ、泣くんじゃねえぞ 俺はアラバマからやってきた バンジョーを膝に |
フォスターの作った作品の中では1・2を争う有名曲でしょうか。日本でもこの歌をご存知ない方はたぶんおられないとは思うのですが、普通津川主一による日本語の詞で歌われますから原詞はご存知ない方がほとんどでしょう。私も1番だけは知っていましたが2番以降の原詞は今回初めて見ました。
で、歌詞を読んで見て、はて取り上げようかどうしようかちょっと困ってしまったのはこの歌、当時のミンストレルショー(白人が顔を黒く塗ってコミカルな道化役を演じるショー)で歌われる典型的な歌で、露骨な黒人差別のフレーズがあるのですね。訳詞が本業でもない私がこういうのを公開したことで抗議やら嫌がらせやらの対応をさせられるのは嫌だな、と思ったらこういう歌は取り上げないか、もしくはそこの部分をなかったことにするというのが賢明なやり方なのでしょうが、それでは私が今までここで世間に文句を言ってきたことと何ら変わらない行為になってしまいますので勇気を奮って掲載します。そういう歴史を振り返って考えるための題材として取り上げたのであって、決して差別的な意図があるのではないことをどうぞご了解ください。
さてこの曲、1848年出版ということでフォスターの作品の中でも比較的初期のものになります。歌詞も南部の訛りが満載で、De→Theやgwine→going、はたまたribber→riverなど、しばらく考えてようやく標準英語の単語にたどり着くパズル解きのような感覚。その挙句に「雨が続いて天気がカラッカラ」だとか「暑くて凍え死にそう」なんてナンセンスなフレーズが出てくるのだからたまりません。コメディアンの歌うデタラメなコミックソングというのがこの歌の本来の姿なのでしょう。適切ではないかも知れませんが歌詞の訛り方といいナンセンスさといい「東京でベコ飼うだァ〜」の吉幾三「俺ら東京さ行くだ」を連想してしまいました。それもあって東北の訛りで訳してみる、というのもちょっと考えたのですが私がそれをやるとかなり嫌味なものになりそうなのでそこまではしないことにしました。
特に困ったのが2番、意味もよく取れないんですが、黒人たちをぶっ殺したなんて事も無げに言っているところはどうでしょう。当時全く新しかった電気というものをネタにしているあたりもけっこう私は驚かされてしまいましたが、こんな感じが当時のミンストレルショーの典型的な歌だったのでしょうかね。「故郷の人々」や「ケンタッキーの我が家」などでは虐げられた黒人たちにも共感の眼差しを注いでいたフォスターですが、初期の作品はこんな人種差別もネタにした伝統的なコミックソングをやはり書いていたのだ、ということが感じられてちょっと考えさせられました。現在はこの2番はまず歌われることはないようです。A telegraphというのは電信そのものであって目に見えないわけのわからないものに乗るというコミカルさを狙ったのだとも思えますが、私が感じたイメージは電信を伝える設備として一番目立つ電柱でしたので、誤りかも知れませんが「電信柱に飛び乗る」としてみました。その方が川を下るところのイメージも付きますし。あとbulgineというのは小型の蒸気機関車のようです。綿花などを積み出す港などで活躍していた機関車なのでしょうか。
もう1曲ミンストレルショーの典型的な歌のように思えるエメット作の「ディキシーランド」も以前取り上げておりますので合わせてご参照頂ければ幸いです。スザンナの3番でも出てくるそば粉のケーキがあちらにも出てきます。南部の黒人たちのよく食べる食事だったのでしょう。言わずもがなですが、これってソバ粉を使ったホットケーキですね。決してショートケーキみたいなお菓子ではありません。
オリジナルは上に載せた3連だったようですが、のちに作者は不詳ですが最後にもう1連追加されます。津川訳でも「もしスザンナに会えなければ 生きてるつもりは少しもない」というフレーズで印象的だったところですが英語の原詞ではこんな感じです。
I soon will be in New Orleans,and den I'll look all 'round,
And when I find Susanna,I'll fall upon de ground.
But if I do not find her,dis darkie'll surely die,
And when I'm dead and buried,Susanna,don't you cry.
すぐにニューオリンズに着く、そしたら俺は周りを見渡すさ
そしてスザンナを見つけたなら、俺は地面にぶっ倒れるだろ
だがあの娘が見つからなけりゃ、この黒ん坊は死んじまうのさ
俺が死んで埋められても――スザンナ、泣かないでおくれ
前の3連のようにコミカルな味が全くないのが続けて読むと少々違和感ありですが、これでこのお話がぐっと引き締まったところもあるように思えます。現在では差別的な表現の多い2番を省略して、1・3連とこの連とで歌われることが多いようです。
( 2007.11.30 藤井宏行 )