Un grand sommeil noir H.184 Quatre chansons pour voix grave |
巨大な黒き眠りが 4つの低い声のための歌 |
Un grand sommeil noir Tombe sur ma vie: Dormez,tout espoir, Dormez,toute envie! Je ne vois plus rien, Je perds la mémoire Du mal et du bien... O la triste histoire! Je suis un berceau Qu'une main balance Au creux d'un caveau: Silence,silence! |
巨大な黒き眠りが わが命の上に降りてくる 眠れ、すべての希望よ 眠れ、すべての羨望よ もはや何物も見えない 私は記憶をなくしたのだ 悪の記憶も 善の記憶も... おおなんと悲しき人生! 私はゆりかごだ 一本の手で揺らされる 小さな穴倉の底に置かれた 静かに、静かに! |
ヴェルレーヌの詩集「智慧」より。詩集ではこのあとの詩がフォーレやアーンの歌曲としても知られている「牢獄にて」です。その繋がりからも類推されるように、これはランボーに対する傷害罪で収監が決まったヴェルレーヌの絶望の歌なのだそうです。確かに「小さな穴倉の底の」などという言葉には牢獄のイメージが感じられますね。
この詩にはラヴェルのつけた非常に鮮烈な作品もありますが、より心にズンと響いてくるのはこの詩のメンタリティと非常に近いところで書かれた作品をたくさん書いたスイス出身のアルチュール・オネゲルのもの。
この不安感に満ちた音楽はやはり彼ならではでしょう。ピアノの高音が重い声にからみついてひときわ陰鬱な子守唄になりました。あまり録音はないようですが、往年の名メゾ、イルマ・コラッシのものがINAレーベルにありました。
( 2007.11.23 藤井宏行 )