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Venise   CG. 468  
  6 mélodies
ヴェニス  
     6つのメロディ

詩: ミュッセ (Louis Charles Alfred de Musset,1810-1857) フランス
    Premières poésies  Venise

曲: グノー (Charles Gounod,1818-1893) フランス   歌詞言語: フランス語


Dans Venise la rouge,
Pas un bateau qui bouge,
Pas un pêcheur dans l'eau,
Pas un falot.

La lune qui s'efface
Couvre son front qui passe
D'un nuage étoilé
Demi-voilé.

Tout se tait,fors les gardes
Aux longues hallebardes,
Qui veillent aux créneaux
Des arsenaux.

Ah! maintenant plus d'une
Attend,au clair de lune,
Quelque jeune muguet,
L'oreille au guet.

Sous la brise amoureuse
La Vanina rêveuse,
Dans son berceau flottant
Passe en chantant;

Tandis que pour la fête
Narcissa qui s'apprête,
Met devant son miroir
Le masque noir.

Laissons la vieille horloge
Au palais du vieux doge
Lui compter de ses nuits
Les longs ennuis.

Sur sa mer nonchalante,
Venise indolente
Ne compte ni ses jours
Ni ses amours.

Car Venise est si belle
Qu'une chaîne sur elle
Semble un collier jeté
Sur la beauté.

紅に染まるヴェニスには
揺れ動く舟ひとつなく
水に漁師の姿なく
灯りひとつない

月も影を隠している
その面を覆われて
星を透かせている
半分透きとおった雲に

すべてが静かだ、番兵たち以外には
長い矛や槍を手に
彼らは銃眼壁で寝ずの番をしている
この武器庫の

ああ、だがそんな時でもひとりならずいる
待っている人が、この月あかりの下
若い伊達男のことを
耳をじっと傾けながら

恋するそよ風の下で
夢見るヴァニーナは
浮かぶ舟の中で
歌いながら通り過ぎてゆく

かたや 祭に出かけようと
ナルシッサは仕度している
自分の鏡台の前には
黒いマスクが

古びた時計など放っておくがいい
年老いた総督の館で
そいつが夜を数えていることなど
長い倦怠の時を

ゆったりとした海の上
何も気にしないヴェニスは
過ぎた時など数えはしない
過ぎた恋も

それほどヴェニスは美しく
街にかけられた鎖さえ
宝石の首飾りに見えるのだ
美女の首にかけられた


ヴェニスのゴンドラに揺られているような曲想もわずかに感じられますが、それよりはむしろ幻想の中を漂っているような浮遊感が不思議な曲です。グノーの歌曲はよくドイツリート風だといわれますが、これなどは確かにフランス語で歌われていなければシューベルトの歌曲のようにも聴こえます。しかしじっくり聴くと余韻の残し方などは紛れもなくフランスの音楽。この曲がグノーの傑作のひとつとして良く取り上げられるのも頷けます。
詩はミュッセでも初期のものだそうで、やがてこの詩人にとって重要な意味を持つことになるこの町を彼はまだ見たことがありませんでした。空想のイメージだけで詩を綴ったのだといいます。グノーの方はその地を訪れてからインスピレーションが湧いてすぐにこの曲を手がけたのだそうです。
こういう曲はやはりジェラール・スゼーのバリトンが良いですね。シューベルト風の雰囲気も漂わせつつ美しいフランス語で魅了してくれます。また短縮版なのが残念ですが、やはりフランスの名バリトン、カミーユ・モラーヌが歌っている録音もあります。

( 2007.11.23 藤井宏行 )


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