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一つのメルヘン    
 
 
    

詩: 中原中也 (Nakahara Chuuya,1907-1937) 日本
    在りし日の歌 (1938)  一つのメルヘン

曲: 友川かずき (Tomokawa Kazki ,1950-) 日本   歌詞言語: 日本語


秋の夜は はるかの彼方に
小石ばかりの 河原があって
それに陽は さらさらと
さらさらと射しているのでありました

陽といっても まるで硅石か何かのようで
非常な個体の粉末のようで
さればこそ さらさらと
かすかな音を立ててもいるのでした

さて小石の上に 今しも一つの蝶がとまり
淡い それでいてくっきりとした
影を落としているのでした

やがてその蝶がみえなくなると いつのまにか
今迄流れてもいなかった川床に 水は
さらさらと さらさらと流れているのでありました......



( 2021.09.24 藤井宏行 )


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