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Vien les gazons sont verts!   CG. 390a  
 
おいで、芝生は緑  
    

詩: バルビエ (Jules Barbier,1825-1901) フランス
      Vien les gazons sont verts! 原詩: Gil Vicente ヴィセンテ

曲: グノー (Charles Gounod,1818-1893) フランス   歌詞言語: フランス語


Si tu dors,jeune fille,
Debout,debout! voici le soleil!
Chasse de tes yeux l'indolent sommeil!
C'est l'heure du réveil!

Suis moi,vive et gentille!
Pieds nus,viens! Les gazons sont verts!
Les ruisseaux jaseurs par les bois déserts
Promènent leurs flots clairs!

もしきみが眠っているなら、少女よ
起きて、起きてよ! ほらお日さまだ!
目を覚ましてよ ぐずぐずした眠りから
もう起きる時間なんだから!

ぼくについてきて、元気よく、でもしとやかに
裸足になって さあおいでよ! 芝生は緑だ!
静かな森を抜けてざわめくせせらぎには
きれいな水が流れてるから!


グノーの歌曲の中でも比較的有名な曲です。タイトルがなかなか魅力的ですが、詩も若い恋人たちの屈託のないお付き合いを微笑ましく描いているような感じでよいです。ところが実はこの詩、甲斐さんが紹介されているヴォルフのスペイン歌曲集の 世俗歌曲第27番『眠りについている君、僕の恋人よ』とルーツが一緒なのです。比較されてみると面白いと思うのですが、同じ原作がどうしてこんなに違った雰囲気を醸し出してしまっているのでしょうか?
ひとつにはこのフランス語の詩が、一度英語の訳を介してもとのスペイン語(ポルトガル語?)から訳されているということも原因かも知れません。更にそれを甲斐さんと私が別々に日本語に訳す...伝言ゲームのようなもので、かたやドイツ語訳経由のヴォルフの方は甲斐さんが「なにやら入水心中の誘いのよう」と書かれているようなムードになり、こちらはご覧のようになりました。
リンクにあるEmily EzustのLied and Song Textsのサイトではフランス語だけでなく、そのもとになった英語の詩も同時に掲載されていますので御興味のある方はぜひご覧ください。
それで、この詩に付けられたグノーの曲ですが、当然予想されるように非常に屈託のない、明るい恋の歌になりました。
まだフランスの歌曲のスタイルがはっきり確立してはいない時代、曲の雰囲気はシューマンやシューベルトの書いた情熱的な歌とそっくりです。どの録音でも1分そこそこで終わってしまうような短い歌ですが、ドイツ歌曲のお好きな方にも違和感なく聴けると思います。最後に「おいで、芝生は緑 Vien les gazons sont verts!」のフレーズを再び持ってきて思い切り盛り上げて終わります。

イギリスのテノールですがピアノのグレアム・ジョンソンとのコンビで魅力的なフランス歌曲の録音がHyperionレーベルにたくさんあるマーティン・ヒルが、その同じピアニストとMeridianレーベルに入れているフランス歌曲集”A French Collection” での情熱的な熱唱が非常に印象に残っています。シューベルトの歌曲集「水車小屋の娘」同様、この弾けるような若さを表すのは、やはりリリックなテノールが良いですね。

(2003.09.26)

コンサートで訳詞をお使い頂くことになりましたので大幅な見直しをかけました。

( 2011.02.12 藤井宏行 )


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