Zhavoronok Proshchanije S. Peterburgom |
ひばり ペテルスブルグよさようなら |
Mezhdu nebom i zemljoj pesnja razdajotsja, Neiskhodnoju strujoj gromche gromche ljotsja. Ne vidat pevca polej gde pojot tak gromko Nad podruzhenkoj svojej zhavoronok zvonkij. Veter pesenku nesjot, a komu, ne znaet. Ta komy, ona pojmjot, ot kovo, uznajet! Lejcja, pesenka moja pesn nadezhdy sladkoj Kto-to vspomnit pro menja i vzdokhnjot ukradkoj. |
空と大地の間に 歌は聴こえてくる その絶えざる流れは 朗々と、朗々と響き渡る 野原でその歌を歌うのは 一体誰なのかは分からない 歌を捧げる女達の上では ひばりが高くさえずっているのに 風は歌を届けてくれる 誰か知らないその人のところへ 届けられた人には分かるだろう 歌が誰からのものなのか! 流れ行け、私の歌よ 優しい希望の歌よ 誰かが私を思い出し そっと溜息をついてくれるように |
グリンカの歌曲集「ペテルスブルグよさようなら」の中の1曲ですが、単独で歌われることの方が多い有名な曲です。チャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」を思い出させるような、ロシアの大地に朗々と歌われる民謡の調べを思い起こさせる美しい旋律です。
ロシア民謡らしくマイナー(短調)な旋律でしみじみと歌われるのですが、Gromche、Gromche(朗々と、朗々と)の部分で明るく転調し、後半希望に満ちて歌が展開するあたりが聴き所でしょうか。
ひばりの鳴き声を模したと思われるピアノの伴奏も絶妙です。
この詩は男の人の心情を描いたものではありますが、歌としては男女の区別なく歌われるようです。大歌手の録音としてはボリス・クリストフのものが最高、ひそやかな弱音がとても奇麗で、ムソルグスキーなどの歌曲でみせるド迫力とは別の彼の魅力が出ています。
最近のお気に入りはTritonレーベルから出ているビブラ・ゲルズマーワ(Sop)のCD「東方のロマンス」に収録されたもので、ちょっと良く出来過ぎた嫌いはありますが(グリンカの歌曲はもっと素朴な方が)、でも声の質といい解釈といい、文句の付けようがありません。グリンカの歌曲は清楚なシンプルさが魅力なので、あまり濃密に歌われると雰囲気がぶち壊しになるのですが、ここでの清楚さは特筆ものです。
このCD、他にもなかなか手に入らないグリンカの他の歌曲がいくつか聴けるのに加え、以前ご紹介したイッポリトフ・イワーノフの歌なども収録してくれていて(タゴールの詩による歌曲は絶品。また興味深い日本の詩に付けた曲〜ちゃんと日本情緒を醸し出しているところが面白い)、マニア垂涎の珍曲・ビベルガン作曲「モンゴルの抒情詩」共々、ロシア秘曲を探す方には必聴のアイテムといえるでしょう。
( 2002.01.14 藤井宏行 )