夜ふる雪 |
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蛇目の傘にふる雪は むらさきうすくふりしきる 空を仰げば松の葉に 忍びがえしにふりしきる 酒に酔うたる足もとの 薄い光にふりしきる 拍子木をうつはね幕の 遠いこころにふりしきる 思ひなしかは知らねども 見えぬあなたもふりしきる 河岸の夜ふけにふる雪は 蛇目の傘にふりしきる 水の面にその陰影(かげ)に むらさき薄くふりしきる 酒に酔うたる足もとの 弱い涙にふりしきる 声もせぬ夜のくらやみを ひとり通ればふりしきる 思ひなしかはしらねども こころ細かにふりしきる 蛇目の傘にふる雪は むらさき薄くふりしきる |
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( 2021.06.01 藤井宏行 )