Une Sainte en son auréole Op.61 La bonne chanson |
後光に包まれたひとりの聖女 優しい歌 |
Une Sainte en son auréole, Une Châtelaine en sa tour, Tout ce que contient la parole Humaine de grâce et d'amour ; La note d'or que fait entendre Un cor dans le lointain des bois, Mariée à la fierté tendre Des nobles Dames d'autrefois ; Avec cela le charme insigne D'un frais sourire triomphant Éclos dans des candeurs de cygne Et des rougeurs de femme-enfant ; Des aspects nacrés,blancs et roses, Un doux accord patricien : Je vois,j'entends toutes ces choses Dans son nom Carlovingien. |
後光に包まれたひとりの聖女 塔の中におわします貴婦人 言葉で表すことのできるありったけの 優雅さと愛らしさに満ちている 聞こえてくるのは黄金の音色 それは遠くの森からの角笛の音 高貴な奥ゆかしさと溶けあっている いにしえの時代の貴婦人たちの そのとびきりの魅力は 誇らしげなほほえみや 白鳥のような純粋無垢さ それに幼女のような赤い頬 真珠のような 白とバラ色の姿 穏やかな貴人のたたずまい ぼくには見える、ぼくには聞こえる、これらすべてが 彼女のカロリング朝風の名前を思うだけで |
フォーレの傑作歌曲集「優しき歌(よき歌)」は、詩人ポール・ヴェルレーヌがのちの妻となるマチルドと出会い、激しい恋心が湧き上がったものを書き綴った同名の詩集21篇の詩より9つを選んでメロディをつけたものです。例によって作曲者は詩に手を入れたりカットしたりして、また詩の順序もかなり入れ替えていますので、詩集全体を見るのと少々印象が違うところもあります。
第1曲目は初めて彼女に出会ったときのような感じも音楽と共に聴くと受けますが、実際の詩集では8番目の詩になり、ほとんど中間部です。恋する少女の美しさを後光の射す聖女や中世の貴婦人に喩え、そして褒めちぎっています。もっとも音楽は淡々として、歌曲集最初の曲としての役割をうまく果たしていると言えましょうか。歌詞にもあるようにちょっと古風な感じのするメロディです。
カロリングとは、フランスにその昔あった王国の名前。8〜10世紀だそうですので日本で言えば平安時代になります。マチルドというのがそんなに由緒ある名なのかは良く分かりませんが、日本でいうと「こまちちゃん」だとか「しきぶちゃん」なんていうニュアンスなのでしょうか。ちょっと不思議な感じもします。
( 2007.11.09 藤井宏行 )