Ein Traum Op.48-6 6 Sanger |
夢 6つの歌曲 |
Mir träumte einst ein schöner Traum: Mich liebte eine blonde Maid; Es war am grünen Waldesraum, Es war zur warmen Frühlingszeit: Die Knospe sprang,der Waldbach schwoll, Fern aus dem Dorfe scholl Geläut - Wir waren ganzer Wonne voll, Versunken ganz in Seligkeit. Und schöner noch als einst der Traum Begab es sich in Wirklichkeit - Es war am grünen Waldesraum, Es war zur warmen Frühlingszeit: Der Waldbach schwoll,die Knospe sprang, Geläut erscholl vom Dorfe her - Ich hielt dich fest,ich hielt dich lang Und lasse dich nun nimmermehr! O frühlingsgrüner Waldesraum! Du lebst in mir durch alle Zeit - Dort ward die Wirklichkeit zum Traum, Dort ward der Traum zur Wirklichkeit! |
ある時ぼくは夢を見た とても美しい夢を ぼくを愛してくれたんだ ひとりのブロンドの娘が それは緑の森の中だった それは暖かな春の時だった つぼみが開き 森の小川は水かさを増し 遠くの村では鐘が鳴っていた ぼくたちはとても満ち足りて 幸せ一杯の気持ちに浸っていた そんな昔の夢よりも素晴らしことが 現実となったのだ それは緑の森の中だった それは暖かな春の時だった 森の小川は水かさを増し つぼみは開き 鐘が遠くの村から響いていた ぼくは君を固く抱いた、君をずっと抱いた そして君を決して離さない! おお、春の緑あふれる森の広がりよ! 君はぼくの中でいつまでもずっと生き続けるだろう そこでは現実が夢となり そこでは夢が現実となったのだ! |
グリーグのドイツ語の詩に付けたOp.48の6曲の中ではもっとも有名で良く取り上げられる作品でしょうか。突き上げるようなエネルギーとともに夢が現実のものとなった喜びを歌うこの曲のメロディは、グリーグのロマンティックな資質が最大限に発揮されていて確かに聴いていても気持ちが良いです。ビョルリンクやフラグスタートなどの北欧の大歌手が歌うときにはノルウェー語に訳された歌詞で歌われることもありますけれども、むしろドイツ語ということでドイツリートを歌う人に良く取り上げられているのが嬉しい曲です。全般的にグリーグの抒情性には似合わないように思えて私はあまり好まないフィッシャー=ディースカウの歌うグリーグ歌曲もこの曲などはそれはそれで悪くありません。
ドイツ語の原詩を書いたのはフリードリッヒ・フォン・ボーデンシュテット(Friedrich Martin von Bodenstedt : 1819-1892)、ペルシャやスラブ系の文学にも造詣が深く、それらのドイツ語での翻訳にも活躍された人だそうです。ただこの詩に関していいますと、私は率直に言いましてあまり感銘を受けませんでした。なんだかあまりに安直な展開で夢が現実となり、その喜びに浸っているというのがあまり面白くないのです(こういう経験のないもののヒガみかも知れませんが)。
美しく印象的なメロディは、しかしそんな歌詞の難点を補って余りある魅力的なもの、グリーグでも指折りの傑作歌曲かも知れません。
( 2007.11.03 藤井宏行 )