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La Paloma    
 
ラ パロマ(鳩)  
    

詩: イラディエル (Sebastian Yradier ,1809-1865) スペイン
      

曲: イラディエル (Sebastian Yradier ,1809-1865) スペイン   歌詞言語: スペイン語


Cuando salí de la Habana
¡Valgame Dios!
Nadie me ha visto salir
Si no fuí yo.
Y una linda Guachinanga
S'allá voy yo,
Que se vino tras de mi,
Que sí señor.

(Refrain)
Si a tu ventana llega
Una Paloma,
Tratala con cariño
Que es mi persona.
Cuentala tus amores,
Bien de mi vida,
Coronala de flores
Que es cosa mia.
Ay! chinita que sí!
Ay! que dame tu amor!
Ay! que ven te conmigo,
Chinita,adonde vivo yo!


El dia nos casemos
¡Valgame Dios!
En la semana que hay ir
Me hace reir
Desde la Yglesia juntitos,
Que sí señor,
Nos hiremos à dormir,
Allá voy yo.

(Refrain)

Cuando el curita nos seche
La bendicion
En la Yglesia Catedral
Allá voy yo
Yo te daré la manita
Con mucho amor
Y el cura dos hisopazos
Que sí señor

(Refrain)

Cuando haya pasado tiempo
¡Valgame Dios!
De que estemos casaditos
Pues sí señor,
Lo menos tendremos siete
Y que furor!
O quince guachinanguitos
Allá voy yo

俺がハバナを出航したときにゃ
ああ、なんてこった!
誰も見送りに来ちゃくれなかった
俺が行くのを知らなかったみたいに...
ひとりの可愛い女の子がなあ
もしおれが行くとなりゃあ
俺の後をついて来たはずなんだが
なあ、きっとそうだぜ

(リフレイン)
もしお前の窓辺にやってきたのなら
一羽のハトが
優しくしてやってくれよな
そいつは俺の代わりなんだから
お前の愛を語ってくれよ
なあ愛しいお前
花の冠をかぶせてやってくれ
そいつが俺だと思ってな
ああ! 可愛いお前 そうだ
ああ! 俺の愛する女 ああ!
ああ! 一緒に来てくれないか
可愛いお前、俺の暮らすところへ


もし俺たちが結婚したとすりゃあ
ああ何てこった!
俺が出発する週のうちにな
俺は笑っちまうけどよぉ
教会から一緒に戻ったら
なあ、きっとそうだぜ
たちまちベッドインなんだろうな
もし俺がするとなりゃあ

(リフレイン)

司祭の野郎が俺たちを
祝福している間
教会のカテドラルの中
もし俺がやるとすりゃあ
俺はお前に手を差し出すのさ
ありったけの愛情をこめてな
司祭にはふたつの聖杯を差し出す
なあ、きっとそうだぜ

(リフレイン)

時が過ぎて行ったらなあ
おっタマゲちまうぜ!
俺たちの結婚生活は
なあ、きっとそうなるんだぜ
最低でも7人の
いやもっとスゲエ!
15人の子持ちかもしれねえんだ
もし俺がやるとすりゃあな

(リフレイン)


スペインの作曲家セバスチャン・イラディエル(Iradierと綴ることも)が1860年代はじめ、キューバの舞曲ハバネラのリズムに乗せて書いた歌曲です。日本でもけっこう良く知られた音楽ではありますが、音楽の醸し出すイメージやキューバのハバナからの船出を描いた歌詞、そしてこの曲がメキシコで大変流行したこともあってかラテンアメリカの曲のように思われていることも多いかも知れません。
メキシコの最後の皇帝マクシミリアンもこの歌をたいへん愛しており、1867年のメキシコ革命で処刑される前に最後の望みとしてこの歌を聴いたのだそうです。

私はスペイン語はさっぱりダメなので、こんなものを訳そうとするのは無謀以外のなにものでもないのですけれども、まだきちんとした翻訳を見たことがないものですからちょっと興味を惹かれて手を出してしまいました。特に4番は何を言っているのだか自分でもさっぱり分からないほどグチャグチャですが、まあこんなもので許してください。リフレインでひとりの娘に愛を告げているにしてはちょっと違和感のある内容ですので明らかに間違っているような気はしますがこれが限界です。また2・3番もよく分からなかったのですが、教会での結婚のシーンを描いているのは間違いなさそうです。

?Valgame Dios!というのはおそらく英語でいうところのOh My God!みたいな感じの言葉でしょうか。Diosはもちろん神様のことです。ファチナンガというのは地図で見たら丁度キューバの真ん中あたりにある町でした。
またリフレインに出てくるチニータというのは女性の名前でしょう。ラテンアメリカ圏ではチニータというと中国女性の愛称で、メキシコあたりでは東洋系の顔立ちをした女性は皆チニータと親しみを込めて呼ばれるようですが、突然中国女性が出てくるというのも変な感じです。結局ここはよく分からなかったのでそのままにしました。

一応クラシック歌曲に分類されるのでしょうけれども、あまりクラシックの歌手は歌っていなくて、私が聴いたことのあるのはスペインのソプラノ、ヴィクトリア・デ・ロス・アンへレスが「世界名歌曲集」のアルバムに入れていた管弦楽伴奏のものくらいです。これに限らず具体的に誰の歌で聴いた、という記憶があまりないのですけれど、この曲のメロディは耳にしっかりと残っています。歴史を重ねていく中で民謡のように定着した曲の仲間にこの歌もなったということでしょうか。
いまやラテン音楽の名作として幅広いジャンルの音楽家に愛されているように思えます。題名をご存知ない方でも、おそらくメロディを耳にすれば「ああこれか!」ときっと感じられるはずです。

(2007.10.22)

ダン・ホセ様より大変詳細なメールを頂き、よく意味が分からなかった部分がだいぶすっきりと見えて参りました。その中ではダン・ホセ様自らの訳詞も添付頂き、私がとんでもない誤解をしていたところもよく分かりましたので、そういった部分を中心に頂いたメールを参考にさせて頂きつつ改訂させて頂きました。スペイン語における仮定法とかも知らずに訳してしまっていたのが根本的な間違いだったのでした。
頂いたメールの中でいくつか興味深いご指摘をされておられるので、ここはぜひ転記をさせて頂きたいと思います(ダン・ホセ様にはご快諾頂きました)。私だけが読ませて頂くのは非常にもったいない内容ですので。

<以下頂いたメールの転記です>
@ この歌はもともと1番しかなかったものと思います(全くの私見)。1番はたいへん美しいラブ・ソングですが、2番から突然品のない言葉遣いになり、スペリングが間違っていたり、正式の文法に則らない表現が出てくるからです。これは船乗りの歌でスペイン、メキシコを初め世界中に広がる過程で、替え歌のかたちで2,3,4番がくっついたものと思われます。
A (レフレイン)の“Bien de mi vida”は直訳すれば「私の人生の良きもの」ですが、ここでは英語で言えば“my dear”ぐらいの意味です。
B 2番以降は、「恋が成就しなかった」という1番の内容を踏まえて、すべて「もし」という仮定法で訳すのが正解です。
C guachinango, guachinanga はキューバの俗語で「メキシコ人」「おべっか使い」という意味のですが、ここでは単に「子供」「男の子」「女の子」と考えていいでしょう。
D chinitaはもともと「可愛い中国女」ですが、ここでは単に「可愛い娘」でよいでしょう。「チニータ」という固有名詞ではありません。
E 2番以降の “Valgame Dios”、“Que si senor”、“S'alla voy”は単に1番に合わせた合いの手みたいなもので、訳す必要はないと思います。
<転記終わり>

一行ずつの対訳の形を守りたいこともあって、拙訳の改訂は必ずしもこれらのご指摘のすべてに従ってはおりませんが、少しはまともな内容に近付いたのではないかと思います。なるほど結婚してひたすら子作りに励もうと言う欲求を爆発させている歌と読み解くと良く分かる歌詞の流れです。船乗りは海の上では女日照りでしょうからね。スペリングの間違いや文法のいい加減さなどについては私のスペイン語力では「辞書に単語が見つからなくて困ったなあ」程度の理解力でさっぱり気が付きませんでしたが、そう言われてから読み返すと何となく分かったような気がします。

ということで、訳詞もほとんど原型をとどめないほどの大改訂となってしまいましたが、これでこの原詞の知られざる超有名曲のことが少しでも知られれば嬉しいことです。ダン・ホセ様、貴重なご指摘とご教示を頂きどうも有難うございました。

( 2007.10.22 藤井宏行 )


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