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Ecuatorial    
 
エクアトリアル  
    

詩: 聖歌 (Hymn,-) 
    Popul Vuh(マヤの聖典ポプル・ブフ)  

曲: ヴァレーズ (Edgard Victor Achille Charles Varèse,1883-1965) フランス   歌詞言語: スペイン語


¡Oh! Constructores,¡Oh! Formadores,
Vosotros veis,Vosotros escucháis,
no nos abandonáis.
Espíritu del cielo,espíritu de la tierra,
dadnos nuestra descendencia,
nuestra posteridad,
mientras hay días,
mientras hay albas.

Que numerosos sean los verdes caminos,
las verdes sendas que Vosotros nos dais,
que tranquilas muy tranquilas estén las tribus.
Que perfectas muy perfectas sean las tribus,
que perfecta sea la vida,la existencia que nos dais.

¡Oh! Maestros gigantes,huella del relámpago,
esplendor del relámpago,
Gavilán. Maestros magos,
Dominadores poderosos del cielo,
Procreadores,Engendradores.

Antiguo secreto,antigua ocultadora,
abuela del día,abuela del alba,
que la germinación se haga,
que el alba se haga.
Hengh hongh whoo.

Salve,belleza del día.
Dadores del amarillo,del verde.
Hoo ha.
Dadores de hijos,de hijas.
Hongh hengh whoo hengh.

Dad la vida,la existencia,
a mis hijos,a mi prole,
que no haga ni su desgracia ni su infortunio
Vuestra potencia,
Vuestra hechicería.

Que buena sea la vida de vuestros sostenes,
de vuestros nutridores,
antes vuestras bocas,antes vuestros rostros,
espíritus de la cielo.
espíritus de la tierra.
Ho oh ah whoo hé oh-ha.

Dad la vida,Dad la vida,Dad la vida.
Ho hé whoo.
Dad la vida oh fuerza envuelta en cielo,
en la tierra,en los cuatro ángulos,
en las cuatro extremidades,
en tanto exista el alba,
en tanto exista la tribu

おお、創造主よ、おお、造物主よ
われらを見届け、聞き届け給え
決して見捨て給うな
天の魂よ、大地の魂よ
我らに子孫を授けたまえ
繁栄を授け給え
昼間にあっても
夜明けにあっても

とてもたくさんの緑の道で
あなた様方のくださる緑の小道で
我ら一族を至極穏やかに導き給え
そして一族の完璧さが完璧でありますように
あなた様方のくださる命を、存在を完全なものとし給え

おお!偉大なる師よ、稲妻の爪跡
稲妻を司る者よ
ガビランよ、魔法の師よ
力強き天の支配者よ
生を授ける者よ、育てる者よ

いにしえの秘密、いにしえの隠されしもの
昼の老婆、夜明けの老婆
芽生えを造り給う者よ
夜明けを導き給う者よ
ヘング・ホング・フー

救い給え、昼の美しさを
黄色をもたらす者よ、緑をもたらす者よ
フー・ハ
息子たちを授ける者よ、娘たちを授ける者よ
ホング・ヘング・フー・ヘング

命を授けたまえ、存在を授け給え
我が息子たちに、我が子孫に
不幸や災いをもたらし給うな
御身の力で
御身の魔法で

御身を支えるものの命は良きもの
御身を養うものの命も
御身のお口の前に、御身のお顔の前に
天の精霊よ
大地の精霊よ
ホー オー アー フー ヘ オーハ

命を授けたまえ、命を授けたまえ、命を授けたまえ
ホー ヘ フー
命を授けたまえ おお天に囲まれ
大地と、四方と
四方の彼方とに包まれた力を
夜明けがある限り
一族がある限り


エドガー・ヴァレーズといえば「騒音も音楽だ!」と言ってか言わずか、「アルカナ」とか「イオニザシオン」など打楽器やサイレンを派手に鳴らす結構激しくも喧しい音楽を書いた20世紀前衛音楽の旗手のひとりですが、彼にマヤ(南米の先住民族ですな)の聖典ポプル・ヴフ(Popul Vuh)を元にした声楽作品があると聞けば、これは聴いてみない訳にはいきません。
聖典ポプル・ブフは日本の古事記やユダヤの旧約聖書のように、この世の起こりを叙事詩的に書き表したたいへん長いもののようで、これはその中から第3部、神様に子孫繁栄を祈っている儀式の部分を拾い出したものです。
18世紀のスペインから来た宣教師のヒメネス神父がスペイン語で記録したものがここでは歌詞のテキストとして用いられています。恐らくこのスペイン語訳から邦訳されたのであろうものが日本でも中公文庫から出ていますので興味のある方はお読みになられてはいかがかと思います。
なお未完ですがアルゼンチンの作曲家ヒナステラにこのポプル・ヴフをテーマにした管弦楽曲があります。これは昔スラットキン・セントルイス交響楽団の録音が出ていました。10年くらい前に耳にしたと思うのですが残念ながら記憶に残っておりません。ただCD評でラテン版「春の祭典」みたいなのがあり、ストラヴィンスキー張りの古代のバーバリズムを描写した音楽だったのではないかと思います。

ヴァレーズの作品はこの詩をバリトンソロとオーケストラで表したものですが、期待に違わぬすさまじい出来の作品に仕上がっています。
冒頭の炸裂するブラスとピヨヨーンと唸るオンドマルトノ(電子楽器)の掛け合いは同じ楽器を使っていることで有名なメシアンのトゥランガリラ交響曲を遙かに超える濃厚な世界を醸し出していますし、オルガンまで使ってとても分厚い響きです。更にバリトンソロが「おお、おお、おお」と入って来ても金管楽器は情け容赦なく炸裂するので(あまりのバランスの悪さに殆ど聴こえないバリトン独唱でなく男声コーラスを使う版もあるとか。これはブーレーズ指揮のSony盤で聴けます)、もの凄くヘヴィなカンタータが出来上がりました。
ヴァレーズは10数曲とその数少ない残された作品の中でも、声楽作品は意外と多くて(といっても4〜5曲ほどですが)、そのいずれもが彼の個性が炸裂したとても印象的な仕上がりとなっています。幸いERATOのエドガー・ヴァレーズ作品集(ケント・ナガノ指揮フランス国立管弦楽団・バリトン独唱はP.ピエルロ)が安く入手できますので、これで是非味わって頂ければ、と思います。
(ノクターナルやオフランドなど他の歌曲もホント「濃い」です)。
ただ残念なのはこのエラート盤の英語の対訳がほんとにひどくて、ほとんど訳になっていないみたいなところがありました。まあ国内盤で見たシャイー/コンセルトヘボウ管のCDの対訳もものすごく読みにくい上にかなり問題ありでしたのでけっこう難しい詩なのでしょう。あまり人のことを言えるほどまともな出来の訳ではないのですが、もう少し背景なんかも調べて、少なくとも自分は理解できるレベルの翻訳を試みてみました。
いきなり冒頭からConstructoresとFormadoresが出てまいります。ポプル・ヴフによれば2組の神様、創造主(ツァコル)と形成主(ビトル)がいて、創造主の作ったものに形成主が手を加えて完成品にするという役割分担になっているようです。
ガビランというのはネットで画像検索をしてみたら鷹みたいな猛禽のようでした。何か魔法使いと関係があるのでしょう。ここではそのままにしておきました。
あとのところの意味はよく分かりませんでしたが、呪文のような言葉ですからこんな程度でご容赦のほど。

( 2007.10.10 藤井宏行 )


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