Pierrot L 15 |
ピエロ |
Le bon Pierrot,que la foule contemple, Ayant fini les noces d'Arlequin, Suit en songeant le boulevard du Temple. Une fillette au souple casaquin En vain l'agace de son oeil coquin; Et cependant mystérieuse et lisse Faisant de lui sa plus chère délice, La blanche lune aux cornes de taureaux Jette un regard de son oeil en coulisse À son ami Jean Gaspard Deburau*. |
気のいいピエロ、お客が見てる アルルカンの結婚式が終わったら お寺の小道を夢見心地で歩く はだけたブラウスを着た娘が 色目を使ってもむだなこと その隙に神々しくも静かに 奴を最高のお気に入りにしようと 牛の角の形をした白い月が その切れ長の流し目を送る 彼女の恋人、ジャン・ガスパール・ドビュローに |
ジャン・ガスパール・ドビュロー(1796-1846)というのは実在したボヘミア出身のダンサー&俳優。外国出身の言葉のハンデもあってパリではパントマイムで独自の世界を築きあげ、現在のピエロのスタイルはほぼずべて彼の手になるものなのだそうです。映画「天井桟敷の人々」が彼のことを題材にしているのはクラシカル映画にお詳しい方ならお馴染みのところでしょうか。
この詩の中でも描写されているような夢見心地のしぐさや白塗りの顔、月に憑かれているところなどもドビュローの創意なのだとか。どうでもいいことですが、彼の名前のボヘミア風の発音はヤン・カスパー・ドボルジャーク、あの「新世界交響曲」のドボルザークとも血縁関係があるのでしょうか。歌はフランスのわらべ歌「月の光」(リュリ作曲とも言われている)のメロディを巧みに織り込みながらたいへんユーモラスに歌われます。
EMIの歌曲全集ではこの曲を含む4曲を「4つの青春のメロディ」としてまとめていますが、他にそういうくくり方をしているものを見つけていませんので一般的な歌曲集として扱って良いものかどうか分かりませんでした。
( 2007.10.01 藤井宏行 )