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Silver threads among the gold    
 
白銀(しろがね)の糸  
    

詩: レックスフォード (Eben Eugene Rexford,1848-1916) アメリカ
      

曲: ダンクス (Hart Pease Danks,1834-1903) アメリカ   歌詞言語: 英語


Darling,I am growing old,
Silver threads among the gold
Shine upon my brow today,
Life is fading fast away.

But,my darling,you will be,will be,
Always young and fair to me,
Yes,my darling,you will be,
Always young and fair to me.


When your hair is silver white,
And your cheeks no longer bright,
With the roses of the May,
I will kiss your lips and say:

Oh! my darling,mine alone,alone,
You have never older grown,
Yes,my darling,mine alone,
You have never older grown.


Love can never more grow old.
Locks may lose their brown and gold,
Cheeks may fade and hollow grow,
But the hearts that love will know

Never,never,winter's frost and chill,
Summer warmth is in them still;
Never winter's frost and chill,
Summer warmth is in them still.


Love is always young and fair.
What to us is silver hair,
Faded cheeks or steps grown slow,
To the heart that beats below?

Since I kissed you,mine alone,alone,
You have never older grown;
Since I kissed you,mine alone,
You have never older grown.

ばあさんや わしも歳を取ってなあ
金髪の間にも白髪が混じって
きょうびは額の上で光っとるわい
人生っちゅうのはすぐに色あせるもんじゃて

だがな ばあさんや おまえはなあ おまえはなあ
わしにとってはいつも若くて綺麗なんじゃよ
ああ ばあさんや おまえはなあ
わしにはいつも若くて綺麗なんじゃ


おまえの髪も白うなって
頬にももうツヤがなくなったちゅうても
五月のバラを手にしてなあ
わしゃおまえの唇にキスをしてこう言うんじゃ

おお! ばあさんや わしだけのもんじゃ わしだけの
おまえは決して歳を取らん
ああ! ばあさんや わしだけのもんじゃ
おまえは決して歳を取らん


愛っちゅうのは決して古びんもんじゃ
髪の毛は茶色や金髪でなくなっても
頬は色あせてこけてしまっても
愛を知っておる人の心だけは

決して 決して 冬の霜や寒さにゃなりゃせんし
夏の暖かさがいつも心の中にある
決して 冬の霜や寒さにゃなりゃせんし
夏の暖かさがいつも心の中にある


愛ってのはなあ いつでも若々しく美しいんじゃ
わしらが白髪になって
頬が色あせ 足元がおぼつかんようになって
心臓が弱ろうと何ほどのことがあろう?

おまえにキスすりゃ わしだけのもんじゃ わしだけの
おまえは決して歳を取らん
おまえにキスすりゃ わしだけのもんじゃ
おまえは決して歳を取らん

津川主一のつけた「白銀(しろがね)の糸 黄金に混じり 今日わが頭(こうべ) さびしく飾る」といった歌詞で昔は広く日本でも歌われた歌でした。そんなに年寄りではないのですけれど私もなぜかこの曲のメロディには幼い頃からの記憶があります。ただ何の解説かは忘れたのですが、「ここで話しかけている相手は若くして亡くなってしまっているので、その日から歳を取らないのだ、自分はどんどん歳を取っていくのに...という歌なのです」というのを読んだ記憶があって、これはそういう悲しい歌なのだとずっと信じておりました。
津川詞が私の世代にとっては古い言葉が多くて子供の目にもさっぱりチンプンカンプンだったというのも原因ですが(この歳になってもまだ難しい...)、今回原詞を手に入れて読んでみると全然違っていました。日本ではじいさんが昔からの連れ合いにこんな言葉はとてもよう言わんと思いますがさすがアメリカ、ある意味感動しながら読ませて頂きました。
津川訳では老いの寂しさが前面に出ていますけれども、ここではもっと前向きな愛の賛歌だったのです。日米の文化の違いというにはあまりにあまりのこと...でも70歳になっても80歳になってもこんな風に情熱的でいられるっていうのも素敵ですね。私には無理でしょうけれども...

そういうわけでありがちなジイさん言葉をまねて訳してみましたが、内容とのギャップにかなり違和感があるかも知れません。でもこれをキモチワルイと思ってしまう人、あなたは古い考えに縛られすぎているだけかも知れませんよ。さて日本のジイさんたちがこのような台詞を臆面なく口にできる時代は果たしてくるのでしょうか?いやそもそもこんな風にキスができるのか???

歌は1865年の作曲ということでフォスターの活躍していたのとほとんど同時代です。けっこう古いですね。作曲者のハート・ダンクス Hart Pease Danks (1834 - 1903)は今やこの曲だけしか知られていないかも知れませんが、スティーブン・フォスターやウイリアム・ヘイス、ヘンリー・ワークなどと同じように当時のアメリカンポピュラー音楽の作曲家のひとり。それもあってこの歌もソロとリフレインをコーラスで歌うというスタイルです。この曲300万枚も楽譜が売れたという当時の大ヒット曲だったのだそうですが、ダンクスは権利を売り払ってしまい、フィラデルフィアの下宿屋で一文無しで亡くなったのだそうです(Wikipediaの記述より)。

ということでこうして原詞にじっくりと触れた今、これからこの曲を聴いたり口ずさんだりするときは私には全然違うイメージが浮かんでしまうのはもう避けられません。もっとも聴こうにも容易に聴ける録音は今はほとんどないようですが。見つけた録音もジョン・マコーマックやアメリア・ガリ・クルチなどの1910年代の古いSP復刻だけでした。SP独特の音と共に聴くと何とも言いがたいノスタルジックな味わいでとても素晴らしいのですが、こうやって詞が分かってから初めてマコーマックが元気良くこの歌を歌っているわけがようやく理解できたということも申し添えておきましょう。

( 2007.09.08 藤井宏行 )


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