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公園唱歌    
 
 
    

詩: 大和田建樹 (Oowada Takeki,1857-1910) 日本
      

曲: 小山作之助 (Koyama Sakunosuke,1863-1927) 日本   歌詞言語: 日本語


六日つとめて樂しくも
  一日あそぶ日曜日
幸(さいはひ)散歩によき天氣
  電車に乗らんか歩かんか

春は木毎に咲く花の
  雲の上野の公園地
森おくぶかく園ひろく
  聲さへかをる時の鐘

犬を連れたる西郷の
  銅像近く祭らるゝ
墓は上野の戰爭に
  戰死遂げたる彰義隊

象あり熊あり獅子ありて
  熱帯北海さまざまの
生物(いきもの)あつめし動物園
  籠には種種の鳥うたふ

神樂きこゆる東照宮
  鰐口ひびく辨財天
水鳥うかぶ不忍の
  池には懸かる觀月橋

凌雲閣を目あてにて
  行けば淺草公園地
觀音参りの人人を
  集めて賑ふ池のそば

子供の好む見せ物は
  玉乗輕業鳥の藝
魚の波間に游ぎ居る
  姿を見るは水族館

電車に乗りて走らせば
  東京市?もいと狹く
上野淺草朝に見て
  晝後は遊ぶ芝公園

先づ駈けのぼる丸山の
  上より見渡す景色よさ
近くは海苔取る芝の海
  遠くは霞む安房上總

沖に帆かけて行く舟も
  陸に走りて來る汽車も
呼ばば答へんばかりにて
  人まで見ゆる遠眼鏡

山を下れば東照宮
  山門そばだつ増上寺
うしろの岡には西向の
  觀音ありて夏凉し

少し離れていと高き
  石段登れば愛宕山
眺望さらに大きくて
  隈なく見渡す東京灣

初日拜みに一月は
  のぼる人人賑はしく
二十六夜の月の出も
  ここにて見ればただ一目

日比谷公園日日に來て
  見れども盡きぬ花の色
春は躑躅(つつじ)に夏牡丹
  秋白菊に冬水仙

鶴の口より吹き出だす
  水は時雨か夕立か
池の鯉見る乙女子の
  袖に掛かるも憎からず

玉投ブランコさまざまの
  遊び賑ふ運動場(うんどうば)
日曜毎に喝采の
  聲もとどろく音樂堂

日枝の神社の境?に
  位置を占めたる公園は
櫻の蕾透かし見る
  雲なき空の星が岡

石段しろく花散りて
  こずゑ若葉となる頃は
靜けき陰に鶯の
  唱歌を聞くも面白や

九段の上には國の爲め
  命捨てたる大丈夫(ますらを)の
英魂不朽に世を守る
  靖國神社の神の庭

泉水清く鯉すみて
  芝生緑に石白し
雪を凌ぎて咲く梅の
  盛は暗夜(やみよ)も暗からず

あれ見よ馬場の空高く
  立ちて夕日に輝くは
維新の功(いさを)留めたる
  大村氏(おほむらうぢ)の像と聞く



東京名勝日曜遊びと副題にあります。

( 2021.03.07 藤井宏行 )


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