Kom nu hit,död! Op.60-1 2 Songs from Twelfth Night |
さあここに来たれ 死よ! シェイクスピアの「十二夜」による2つの歌 |
Kom nu hit,kom nu hit,död! I krusflor förvara mig väl; Hasta bort,hasta bort,nöd! Skön jungfrun har tagit min själ. Med svepning och buxbom på kistans lock Håll dig färdig; Mång trogen har dött,men ingen dock Så värdig. Ingen ros,ingen ros,då Månde strös på mitt svarta hus; Ingen vän,ingen vän,må Störa hvilan i jordens grus. Mig lägg,för tusen suckars skull, Åt en sida, Der ej älskande se min mull Och kvida. |
さあここに来たれ さあここに来たれ 死よ! 糸杉で私をしっかり包んでおくれ 急ぎ行け 急ぎ行け 願いよ! 美しく若き娘が我が魂を奪い去ったのだ 経帷子とツゲで私の棺を覆うのだ さあ用意するがいい 多くの誠実なものが死してきた、だが誰もまだ これほどに気高くはなかったのだ 一輪のバラさえ、一輪のバラさえもその時に わが暗い墓の上に撒いてはならぬ 一人の友さえ、一人の友さえも 私の地中での安息を妨げてはならぬ われを横たえよ、千回の溜息から 逃れられるところへ ひとりの恋人がわが土を見つけて すすり泣くことがないところへ |
シベリウスが曲をつけ1909年に上演されたシェイクスピアの劇音楽「十二夜」より道化のフェステの歌う歌です。古今の作曲家の創作意欲をそそる歌のようでたくさんの曲を聴くことができますが、このシベリウスのものもその中で傑作のひとつに数えられるでしょう。彼は1908年に悪性の腫瘍で死の危機に陥ります。その体験がこの音楽に反映していないことはないでしょう。なんとも冷たく、厳しい歌です。
オリジナルはギターによる伴奏であったようで、最近国内盤が復刻されたシベリウス歌曲全集でのトム・クラウセの歌ではそのオリジナルのスタイルを聴くことができます(カルロス・ボネルのギター伴奏)。美しいのですが少々この歌の厳しさに欠けるような気もします。そんなところはヨルマ・ヒュンニネンの歌声の方がこの曲想に合っているかも知れません。彼の歌はゴトーニのピアノ伴奏(Finlandia)とセーゲルスタム指揮タンペレフィルのオーケストラ伴奏(Ondine)のふたつの録音を聴くことができましたがいずれも鮮烈です。
また興味深いところではこちらも最近CDに復刻されたフィンランドの昔の名バス歌手、キム・ボルイの歌ったこの歌(DG)。英語のオリジナル詞で歌っていますがけっこう素敵なはまり具合でした。
詞はスウェーデン語。Deccaの歌曲全集の大束省三さんの訳の助けも借りながら、できるだけスウェーデン語に忠実な訳を試みてみました。輸入盤のCDでは英語対訳にみなシェイクスピアのオリジナル詞を持ってきていて全く参考になりませんでしたので、長いこと興味を持っていたところです。まあ英詩とそれほどびっくりするような違いはありませんでしたけれども...
いくつか訳で気になる言葉(勘違いしている可能性も)としては、飛び去れと言っているところのnöd、これは英語でいうとneedに当たりますが、シェイクスピアの原詩では飛び去るのはbreathです。
大束氏の訳では「憂い」となっていましたが、実際のところどうなのでしょう。
Buxbomはツゲの木、シェイクスピア詩ではyew(イチイ)でしたね。このあたりにも文化の違いがあるのでしょうか。また2番はうまくニュアンスが掴めずにたいへんにぎこちない訳になってしまいました。申し訳ありません。
( 2007.06.30 藤井宏行 )