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Nocturne    
  Lieder und Gesänge,III. Folge
夜想曲  
     リートと歌 第3巻

詩: ハルトレーベン (Otto Erich Hartleben,1864-1905) ドイツ
    Meine Verse 1883-1904  Süß duftende Lindenblüte

曲: マルクス (Joseph Marx,1882-1964) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Süß duftende Lindenblüte
in quellender Juninacht.
Eine Wonne aus meinem Gemüte
ist mir in Sinnen erwacht.

Als klänge vor meinen Ohren
leise das Lied vom Glück,
als töne,die lange verloren,
die Jugend leise zurück.

Süß duftende Lindenblüte
in quellender Juninacht.
Eine Wonne aus meinem Gemüte
ist mir zu Schmerzen erwacht.

甘い香りのライムの花が
むせかえる六月の夜の中
喜びがひとつ 私の思いから
私の心の中に目覚めた

響いてくる 私の耳に
静かな幸福の歌が
響きとなって ずっと昔になくした
青春が静かに戻ってくる

甘い香りのライムの花が
むせかえる六月の夜の中
喜びがひとつ 私の思いから
私の痛みとなって目覚めた

ヨーゼフ・マルクスはオーストリアの作曲家、生没年からもお分かりのように比較的最近活躍した人です。にも関わらずその音楽といえば、リヒャルト・シュトラウスの音楽に更に甘い砂糖をまぶして1ヶ月くらい寝かせておいたようなそんなトロトロのロマンス。あまりに通俗的に聴こえて好まない人も多いかも知れませんが、私にとってはこの脳をとろかすような耽美の世界、聴き込むほどに癖になってきつつあります。
ドビュッシー初期の響きにシュトラウスの旋律美を足し合わせたようなひたすらに美しい音楽は、ドイツリートの佳品としてもっと聴かれても良いのではないでしょうか。私もそうは言いながら彼の歌曲では代表作のひとつであるハイゼの詩による「イタリア歌曲集」(ドロシー・ドロウの歌・ETCETERA)と、ルネ・フレミングの歌う何曲か(Decca)しか耳にしたことはないのですけれど。
取り上げたこの曲はフレミングのアルバムからです。「ナイト・ソングス」と名づけられたこのアルバム、フォーレ、ドビュッシーから始まってこのマルクス、リヒャルト・シュトラウスを経てラフマニノフで締めるというなかなか凝ったつくりです。フォーレの選曲だけイマイチの感もありますが、あとは夜の音楽として実に良いセレクションです。何よりマルクスの曲が4曲も聴けるのが嬉しい。この曲は題名の「夜想曲」からも窺われるとおり実に耽美的な曲です。ただ最後を苦しみで締めているところなどは世紀末の香りで一杯ですね。もっとも作曲は1911年なのだそうですが。
彼女の声は率直にいうと私はあまり好みではないのですが、こういう考え抜いたアルバムをこれに限らずいろいろ出してくれるので大変ありがたいです。

( 2007.06.30 藤井宏行 )


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