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Siren’   Op.21-5  
  Dvenadtsat’ romansov
ライラック  
     12のロマンス

詩: ベケートワ (Ekaterina Andreyena Beketova,1855-1892) ロシア
      Сирень

曲: ラフマニノフ (Sergei Rachmaninov,1873-1943) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Po utru,na zare,
Po rosistoj trave,
Ja pojdu svezhim utrom dyshat’;
I v dushistuju ten’,
Gde tesnitsja siren’,
Ja pojdu svoe schast’e iskat’...

V zhizni schast’e odno
Mne najti suzhdeno,
I to schast’e v sireni zhivet;
Na zelenykh vetvjakh,
Na dushistykh kistjakh
Moe bednoe schast’e tsvetet...

朝 夜が明けるときに
露に濡れた草をかき分けて
私はさわやかな空気を吸いに出かけよう
かぐわしい木陰に
ライラックの花が咲き誇るところ
私はそこで幸せを見つけたい

人生にはたったひとつの幸せがある
私はそれを見つけたい
その幸せはライラックの花の中にあるのだ
緑の枝の上に
このかぐわしい花の房の中
私のつつましい幸せが咲いている


ラフマニノフもまたハッとするような美しい歌曲をたくさん書いていますが、これもそんなひとつ。まだ朝靄が残る森に咲き誇るライラックの白い花。そこにたったひとりで出かける主人公。ほとんどささやくように歌われるこの歌の主人公が捜し求める幸せも「たったひとつ」とは言いながらもたいへんつつましいものなのでしょうか。濃密なメロディが魅力のラフマニノフ歌曲にあってはかなり控え目で地味な曲ですけれども、日本人のツボは突いているでしょうか。きっとお好きな方は多いのではないかと思います。
ロシアのパワフルな歌手が歌うと声は美しいのですが、どうしてもこのつつましさが犠牲になりがちで、なかなかこれはという歌に出会えないのがつらいところです。この曲に関してはゴルチャコーワの歌ったものが良かったです。彼女のロシア歌曲集の録音(Philips)、ちょっと調子が悪かったのか切れ味にかけるところがあるのですが、それがこんな曲に関してはケガの功名で実にいい雰囲気をかもし出してくれているのです。少々ぼやけたところがありますけれども、楚々とした感じは良く出ていて聴き応えがありました。

( 2007.06.23 藤井宏行 )


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