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空しき秋    
 
 
    

詩: 中原中也 (Nakahara Chuuya,1907-1937) 日本
    在りし日の歌 (1938)  老いたる者をして−−「空しき秋」第十二

曲: 諸井三郎 (Moroi Saburou,1903-1977) 日本   歌詞言語: 日本語


老いたる者をして静謐の裡(うち)にあらしめよ
そは彼等こころゆくまで悔いんためなり

吾は悔いんことを欲す
こころゆくまで悔ゆるは洵(まこと)に魂を休むればなり

あゝ はてしもなく(涕)なかんことこそ望ましけれ
父も母も兄弟(はらから)も友も はた見知らざる人々をも忘れて

東明(しののめ)の空の如く丘々をわたりゆく夕べの風の如く
はたなびく小旗の如く涕かんかな

或はまた別れの言葉の こだまし 雲に入り 野末にひびき
海の上への風にまじりてとことはに過ぎゆく如く......

   反歌

あゝ 吾等怯懦のために長き間 いとも長き間
徒なることにかゝらひて 涕くことを忘れゐたりしよ げに忘れゐたりしよ......



青空文庫の「在りし日の歌」の該当する詩のところに脚注として
「空しき秋二十数篇は散佚して今はなし。その第十二のみ、諸井三郎の作曲によりて残りしものなり。」とあります。

( 2021.01.19 藤井宏行 )


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