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詩: 竹久夢二 (Takehisa Yumeji,1884-1934) 日本
      

曲: 小松耕輔 (Komatsu Kousuke,1884-1966) 日本   歌詞言語: 日本語


ふるさとの 山のあけくれ
みどりのかどに 立ちぬれて
いつまでも われ待ちたもう
  母はかなしも


幾山河 遠くさかりぬ 
ふるさとの みどりのかどに
今もなお われ待つらんか
   母はとおしも



母のことを思う子の心を歌った歌は日本にはけっこう多くあるように思います。これはその中でも傑作のひとつに挙げられるでしょうか。レトロな大正ロマンを感じると現在でも人気の高い画家&詩人の竹久夢二の手になる、子を思う母心を親不孝ばかりしている子の視点から悲しくも美しく描き出した詩に小松耕輔(1884-1966)がとても素朴で美しいメロディをつけました。
小松はフランスに留学したこともあり、フランス近代音楽についての詳しい解説書なども書いていますが、もともと童謡運動などに深く関わっていた人ということもあり、こんな感じの素朴な歌曲や童謡に本領を発揮した人のようです。
私も親元を離れて遠くに暮らすことが20年近くなりましたが、ようやく最近こんな詩の情景が身にしみて分かるようになって来ました。昭和30〜40年代の高度成長期には田舎から大都会に就職で出て行く若者がたくさんいた時期でしたから、この詩に描かれたような思いをした母親もまたたくさんいたことでしょう。

そんなこともあってか小松耕輔の作品の中ではほとんど現在唯一取り上げられている曲のように思えますが、それでも取り上げられる頻度はそんなに多くはないでしょうか。どんな良い曲でも時の流れの中でその多くは忘れ去られていくという事実を感じさせられて何とも寂しくなってしまいますが、せめてこの歌だけでも残ってほしいものです。

( 2007.05.12 藤井宏行 )


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