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Serenade    
 
セレナーデ  
    

詩: マリオ,E.A (Mario,E.A,1884-1961) イタリア
      

曲: ドリゴ (Riccardo Eugenio Drigo,1846-1930) イタリア   歌詞言語: イタリア語


Stanotte tranquillo è il mar:
su la sponda lieve mormora…
La luna lontano appar
ed ogni onda vaga tremola…

Tremola qui,nel mio seno,
la speranza del nostro amor…
Là,sotto il cielo sereno,
è bello vivere,
unir nell'estasi
cuore e cuor…

Deh! non dormire,vieni laggiù,
tu che soffrire non dovrai più…
Laggiù,verso l'infinito del cielo e del mar,
per non tornar mai più!


E' questa l'ora d'amar:
ogni amante la desidera…
La bocca vuole baciar,
e,tremante,bacia e mormora…

Canta l'amor la squisita
Ninna nanna,se stanco è il cor,
e ne la pace infinita
il cor si smemora
nel dolce fascino
dell'amor…

Deh! non dormire,vieni laggiù,
tu che soffrire non dovrai più…
Laggiù,verso l'infinito del cielo e del mar,
per non tornar mai più!



静かな今宵 海は
浜辺でそっとささやき声を立てる
月は遠くに顔を出し
波にその影を揺らしている

揺れ動くのは このぼくの胸も同じ
ぼくたちの愛の希望で...
さあ この美しい空の下
すばらしい人生を
うっとりと通い合わせようよ
心と心を

さあ 眠っていないで 遠くに行こうよ
悩んでいる君よ もう悩むことはないんだ
遠くに、限りない空と海に向かって
二度と帰らない旅へと


今は愛の時だ 
すべての恋する人が求めている時
口はキッスを求め 
震え くちづけし 揺らめく

陶酔的な愛を歌い
疲れた心には子守歌を歌おう
永遠の安らぎの中で
心は陶酔する
甘い魅惑の中で
この愛に

さあ 眠っていないで 遠くに行こうよ
悩んでいる君よ もう悩むことはないんだ
遠くに、限りない空と海に向かって
二度と帰らない旅へと



古今東西のセレナーデの中でもこのメロディに匹敵する美しさのものはそうはないのではないでしょうか。今回イタリア語の原詩を初めて見ましたがこちらも実に美しく、夢見るような月の光のもと恋人を優しく誘っています。
作曲者のリッカルド・ドリゴは北イタリアのパドヴァ出身、長くロシアのペテルスブルグでバレエ指揮者として活躍していたというキャリアがあるのだそうです。またそのためもあってバレエ曲の作品が多く、そしてこのセレナーデも実はバレエ音楽「Les Millions d’Arlequin 百万長者のアルルカン(道化師)」(1900)から取られた作品とのことでしたので、当初は歌詞がなくてあとから詞が付けられたのかも知れません。今でも歌われるよりはヴァイオリンのソロや、管弦楽によるムードミュージック的な演奏の方が多いように思います。とはいいながら彼のバレエ作品は忘れ去られ、今やこのセレナーデ1曲だけが「ドリゴのセレナーデ」という題名で残っているだけのような状態です。
また興味深いのはイタリアのポピュラー曲をオペラ歌手が色々吹き込んでいるアルバムでも、この曲はさほど多く取り上げられていない、ということが挙げられます。
私が耳にできたのもジーリ(Nimbus)とタリアヴィーニの歌(BMG)くらいしかないのですが、調べてみるとこの曲、日本では昭和13年の大ヒット映画「愛染かつら」での劇中歌として使われたのが広く知られたきっかけ(このときの歌は松原操)ということですので、もしかするとイタリア本国含めたどの諸外国よりも日本でこの曲の知名度が高いのかも知れません。実際ネットで歌詞を検索しても他のイタリア歌曲のようにたくさん引っかかってくることはありませんでした。日本語の歌詞は堀内敬三によるものでこれも見事ですが、例によって著作権がありますので掲載できず申し訳ございません。また「ドリゴのセレナーデ」という題で通用するのも恐らく日本だけなのではないかと思います。
ちなみに私の聴けたイタリアの歌手たちの2枚の録音ではいずれもタイトルはNotturno d’amore(愛の夜想曲)となっていました。

#とまあここまで書きましてから、念のため作詞者の経歴も調べてみましたら没年が1961年とありました。なるほどそれで検索しても原詩が簡単に見つからないわけです。残念ながら著作権の20年延長が今後なかったとしても2012年まで詞の掲載ができませんが、せっかく訳したので翻訳のみ掲載させて頂こうかと思います。なお作詞者はむしろ作曲家としての方が良く知られていて、日本でもおなじみのナポリターノ「遥かなるサンタルチア Santa Lucia Luntana」の作曲者でもありました。

この曲、とても古い録音なのですがベニアミーノ・ジーリの歌が実に美しい歌心に溢れていてとても素敵でした。タリアヴィーニのも歌だけ取ると決して悪くはないのですがこの録音、管弦楽伴奏をとてつもなくヘンな具合に編曲していて雰囲気をぶち壊しているのが問題です。タリアヴィーニも歌いにくそうで気の毒。

(2007.05.05)

今年の1月1日をもって、作詞者の著作権が日本では切れたようですので原詩を追加致しました。

( 2012.09.03 藤井宏行 )


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