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En sourdine   Op.58  
  Cinq mélodies “De Venise”
ひそやかに  
     5つのメロディ「ヴェネツィア」

詩: ヴェルレーヌ (Paul Verlaine,1844-1896) フランス
    Fêtes galantes 21 En sourdine

曲: フォーレ (Gabriel Fauré,1845-1924) フランス   歌詞言語: フランス語


Calmes dans le demi-jour
Que les branches hautes font,
Pénétrons bien notre amour
De ce silence profond.

Mêlons nos âmes,nos cœurs
Et nos sens extasiés,
Parmi les vagues langueurs
Des pins et des arbousiers.

Ferme tes yeux à demi,
Croise tes bras sur ton sein,
Et de ton cœur endormi
Chasse à jamais tout dessein.

Laissons-nous persuader
Au souffle berceur et doux
Qui vient,à tes pieds,rider
Les ondes des gazons roux.

Et quand,solennel,le soir
Des chênes noirs tombera
Voix de notre désespoir,
Le rossignol chantera.

高い枝々のつくりなす薄ら明かりに
静かに身を沈めて
この深い沈黙を
ぼくたちの恋にしみこませよう

松やヤマモモの
そこはかとない物憂さにつつまれながら
ぼくたちの魂を、ぼくたちの心を
恍惚としたぼくたちの官能を溶かしあわせよう

きみの目を半ば閉じて
腕を胸のうえに組んで
まどろんだ君の心から、どんな考えも
永久に追い払ってしまうんだ

枯葉色の芝を波立たせながら
きみの足元に吹いてくる
そよ風のやさしいゆすぶりに
ぼくたちは身をまかせていよう

そして黒々とした樫の木々から
おごそかに夕暮れが降りてくるとき
ぼくたちの絶望の声かのように
夜鳴きうぐいすが歌うことだろう

歌曲集「ヴェネツィアより」の第2曲。ヴェルレーヌの名詩とフォーレの音楽がそれぞれを高めあう詩と音楽の希有の幸福な出会い。タイトルの通りひそやかなピアニッシモで歌われる第3節、第5節の陶酔は絶品です。好きな歌唱は美声バリトンのスゼーの全盛期のビロードの声が聴かれるフィリップス盤と、深い響きのコントラルトのナタリー・シュトゥッツマン(BMG)。ピアニッシモの精妙さではナタリーが一枚上手ですが、スゼーもやはり素晴らしく、両方聴いて頂きたいです。

( 2001.05.29 甲斐貴也 )


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