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Våren flyktar hastigt   Op.13-4  
  7 Laulut
春はすばやく過ぎ去る  
     7つの歌

詩: ルーネベリ (Johan Ludvig Runeberg,1804-1877) フィンランド
    Lyriska dikter II - Idyll och epigram 12 Våren flyktar hastigt

曲: シベリウス (Jan Sibelius,1865-1957) フィンランド   歌詞言語: スウェーデン語


Våren flyktar hastigt,
Hastigare sommarn,
Hösten dröjer länge,
Vintern ännu längre.
Snart I sköna kinder,
Skolen i förvissna
Och ej knoppas mera.
Gossen svarte åter:
Än i höstens dagar
Gläda vårens minnen,
Än i vinterns dagar
Räcka sommarns skördar.
Fritt må våren flykta,
Fritt må kinden vissna,
Låt oss nu blott äska,
Låt oss nu blott kyssas.

春はすばやく過ぎ去るし
もっとすばやく夏が
秋は長く留まり
冬は一層長いのよ
すぐにこのみずみずしい頬も
色あせてしまうのよ
そして二度とは咲かないの
若者はそれに答えて言う
たとえ秋の日にあっても
幸せな春の思い出がある
たとえ冬の日であっても
夏の恵みは残っている
春が過ぎ去るのが何だっていうんだ
頬が色あせるのが何だっていうんだ
さあ、今愛し会おう
さあ、今くちづけしよう


これも恋を哲学チックに描写したルネベルイの詩にシベリウスが曲を付けた作品です。「牧歌と警句 Idyll och Epigram」より取られた詩のため、こちらの題名で呼ばれることもあるようですが、詞の最初の「春はいそぎ行く」の方が一般的でしょうか。情景は今のようにみずみずしさ溢れる春の日なのだと思いますが、それにしてもこの「頬がすぐに色褪せるだろうよ」と言っているのは誰なのでしょうか。この若者の恋人が自分のことを悲観して言っているようにも読めますし、余計なお節介の第三者が盛り上がっているふたりに茶々を入れているだけのようにも思えます。翻訳ではどちらかというと後者の訳し方が多いようですが、ここではやはり全体の辻褄があう少女と少年の会話となるようにしてみました。ただおかげで何だか若者がただ単に欲望の塊となって女の子に迫っているようなニュアンスになってしまったのは決して翻訳者の下劣さからだけではないはずです。たぶん。

これは伴奏がとてもお茶目な感じで面白いです。とりわけ管弦楽伴奏に編曲されたものは木管楽器の響きが軽妙でたいへん印象的。最後の「キスしよう」のところの歌の間と木管の掛け合いなど思わず微笑んでしまいます。けっこう良く取り上げられる曲なので録音はたくさんあるのではないでしょうか。フラグスタートが同郷の指揮者フィエルスタートの指揮するロンドン交響楽団をバックに入れたDecca盤を私は愛聴しています。ピアノ伴奏ではラルフ・ゴトーニの絶妙なバックにつけたヨルマ・ヒュンニネンの歌(Finlandia)が素晴らしかったです。

( 2007.04.20 藤井宏行 )


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