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Sången om korsspindeln   Op.27  
  Kung Kristian II
鬼蜘蛛の歌  
     劇音楽「クリスチャンU世」

詩: パウル (Adolf Georg Paul,1863-1943) スウェーデン
      

曲: シベリウス (Jan Sibelius,1865-1957) フィンランド   歌詞言語: スウェーデン語


Bak villande skog på en grönskande slätt,
där solskenet gassar så hett,
där sitter en spindel så svart och så stor
i gräset och stirrar och glor.
Han solstrålar fångar och tvinnar och gnor
och spinner till mörker och knyter ett flor
så starkt och så tätt,
så luftigt och lätt,
i dess maskor han fångar var levande själ
och pinar och plågar ihjäl.

Och solen hon bleknar,och ljuset så matt
det slocknar i svartaste natt.
Och mänskorna vandra omkring utan själ
men finna sig fram lika väl.
De tycka att mörkret är ljust som en dag
och mörkrädda bli,när det ljusnar ett tag
och gömma sig väl,
och drömma sin själ,
så stark och så fri. När de vakna från det
de tro att de somna så sött.

Men spindeln han spinner så arg i sitt sinn'
- en själ kan han ej fånga in.
Den själen går fri genom tidernas varv
från hjälte till hjälte i arv.
Och maktfulla gör dem och bringar dem nöd
och ära och nesa,- och seger och död,
och pina och blod
för mandom och mod. -
Ty alla de strida mot spindelens nät
och alla de falla på det.

道なき森の奥にある緑の野原
太陽の光が熱く降り注ぐところ
そこに一匹のとても黒くて大きな蜘蛛が座っていた
草の中で、ぎろぎろと目を動かしながら
そいつは太陽の光を捕まえ、撚って糸にする
そして糸で闇を紡ぎ ヴェールを織る
とても強く とても固く
空気のようにとても軽い
その網目にそいつは捕える 生きている魂を
そして責めさいなみ 死に至る苦しみを与えるのだ

太陽が色あせ 光が弱まり
夜の暗闇の中へと消え去ると
魂を失った人々は歩き始めるが
その歩く道はいつもと同じだと思っている
暗闇の中でも昼間のように明るいと考えるのだ
そして暗闇を恐れる、もしちょっとでも灯りがあると
自分たちの身を隠し
夢想している、魂が
とても強く自由であるのだと そして目覚めているときも
自分たちはぐっすり眠っていると思い込んでいるのだ

けれども蜘蛛は怒りを込めてなおも紡ぐ 
ただひとつの魂も捕えることができないので
その魂は時の隙間をすり抜けて自由に行き来をしながら
英雄から英雄へと受け渡されていく
そして力をもたらし、また苦難をももたらす
栄誉と恥辱を そして勝利と死を
苦しみと血をもたらす
雄雄しさと勇気のために
なぜなら英雄たちはみな 蜘蛛の巣と戦い
そしてみな そこで斃れ去るのだから


非常に視覚的なイメージが強烈な詩です。そして内容も哲学的。実はこの曲もともとは戯曲の中の歌で、しかも道化師によって歌われるものだったのだそうです。シェイクスピアの「リア王」なんかを思い起こして下さればお分かりのように、舞台の上ではこういった道化師や愚か者がとても深遠な台詞を歌に託して伝える、といったことは良く行われますね。

今でも管弦楽の組曲として時折取り上げられる劇音楽「クリスチャン2世」、シベリウスの音楽院時代の友人で劇作家のアドルフ・パウル(1863-1943)によって書かれた16世紀のデンマーク王の悲劇を描いた物語ですが、その第5幕、自らの恐怖政治の反動から後半生の30年近く幽閉された生活を送らなければならなくなった王の傍らで道化師がこれを歌います。失意の王の境遇を描写しているかのような静かにたぎる怒りの描写。穏やかで美しい長調のメロディだけにこの歌詞とのギャップがとても不思議な味わいです。詞でほのめかされているのは蜘蛛がクリスチャン王の象徴なのかそれとも蜘蛛に倒されるという英雄がそうなのか、深い意味を感じながらも私にはどちらとも判断が付きませんでした。

オリジナルの劇音楽版でこの歌を含めた形で録音されているものもいくつかあるようですが私はまだ聴いたことがなくて、独立した歌曲として管弦楽伴奏ではヨルマ・ヒュンニネンのもの(BISとOndineの2種類)とピアノ伴奏でのトム・クラウセのもの(Finlandia)くらいしかありません。どちらの歌もすばらしいですが、やはりここは管弦楽伴奏で派手に聴かせてくれるヒュンニネン盤の方が印象的でしょうか。特にOndine盤の方はセーゲルスタム指揮のタンペレフィルの伴奏も貫禄があってなかなか聴き応えがあります。

( 2007.04.07 藤井宏行 )


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