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気楽に行こう    
 
 
    

詩: マイク眞木 (Mike Maki,1944-) 日本
      

曲: マイク眞木 (Mike Maki,1944-) 日本   歌詞言語: 日本語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください


高度経済成長がその勢いを減じ、また公害問題などの社会のひずみが目に見えて現れてきた1970年、富士ゼロックスのコマーシャルの中で「モーレツからビューティフルへ」という秀逸なコピーがありました。CMの中身は私もあまりはっきりした記憶はないのですけれども時代の転換点を先取りしたコピーということで、仕掛け人の電通マン・藤岡和賀夫の名前と共に現代史を語る際にはよく言及されます。
そんな時代の転換期を予期したかのこのコピーが念頭に置いていたと思われるのが恐らくその1年前の丸善石油のガソリンのCM、爆走する車で跳ね上げられてひるがえる小川ローザのスカートで今でも良く話題になる「オー・モーレツ」でしょう。こちらはさすがに私もリアルタイムでの記憶はないのですが、こちらも一時代を画したテレビコマーシャルとして名を残しています。
そして更に興味深いのは翌1971年には同じガソリンのCMなのですが、こちらはモービル石油でまさにこの「モーレツからビューティフルへ」のビューティフルを地で行くような画像と音楽が流されたということ。そこで使われたメロディがマイク真木作詞・作曲の「気楽に行こう」でした。
「気楽に行こうよ 俺たちは 焦ってみたって 同じこと」とカントリーミュージック風ののんびりした歌声に乗せて、広大な草原の中の道、エンジンのかからなくなった車をえっちらおっちら押していく男2人。ところどころで道草を食いながらどこへ行くのか気ままな旅のようです。最後の「車は、ガソリンで動くのです」というナレーションもノンビリとしていて、「うちの製品買いなはれ」というような押し付けがましさが全くないのも面白く、先日突然の訃報が伝えられた歌手・俳優の鈴木ヒロミツ氏の演技も光ってまだ小さい子供だった私も印象に残っているCMです。
色々調べていくとこのCM、資生堂の当時の一連のテレビコマーシャルを手がけ、天才CMディレクターと言われた杉山登志(登志雄)の作品の作品のひとつなのだそうです。彼は37歳で自らの命を絶ってしまいましたが、その遺書の中の「ハッピーでないのに ハッピーな世界などえがけません 夢がないのに 夢を売ることなどは……とても」という言葉は何かこののどかなCMを思い起こすと
意味深長。あのCMが流れていた頃は年端もいかない子供だった私が40年近くたって大人になっても、あののどかな情景はいまだ日本では見果てぬ夢の世界のように思えてなりません。やっぱり高度成長の時代と働き方は変わっていない、いやもっといえば日本人のライフスタイル自体が本質的に変わりようがないのかも知れません。

  のんびりゆこうよ 俺たちは なんとかなるぜ世の中は

個人の心のあり方だと言ってしまえばそうなのかも知れないですが、「モーレツ」の呪縛は未だに根強く残っているように私には思えてなりませんが皆さんはいかがお感じですか? 

( 2007.03.18 藤井宏行 )


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