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Si mes vers avaient des ailes    
  Premier Recueil de 20 mélodies
ぼくの詩に翼があったなら  
     20のメロディー第1集

詩: ユゴー (Vicomte Victor Marie Hugo,1802-1885) フランス
    Les contemplations - 2. Livre deuxiême -- L'âme en fleur 2 Mes vers fuiraient,doux et frêles

曲: アーン,レイナルド (Reynald Hahn,1875-1947) フランス   歌詞言語: フランス語


Mes vers fuiraient,doux et frêles,
Vers votre jardin si beau,
Si mes vers avaient des ailes,
Des ailes comme l'oiseau.

Ils voleraient,étincelles,
Vers votre foyer qui rit,
Si mes vers avaient des ailes,
Des ailes comme l'esprit.

Près de vous,purs et fidèles,
Ils accourraient,nuit et jour,
Si mes vers avaient des ailes,
Des ailes comme l'amour!

ぼくの詩はやさしく、軽やかに飛んでいくのに
あなたの美しい庭へと向かって
もし、ぼくの詩に翼があったなら
鳥のような翼が

輝きながら飛んでいくのに
あなたの明るい暖炉のそばへと
もし、ぼくの詩に翼があったなら
精霊のような翼が

あなたのそばへ、純粋に、誠実に
夜も昼も通い続けるのに
もし、ぼくの詩に翼があったなら
愛のような翼が


ヴィクトル・ユゴーがルイ・ナポレオンのクーデター&第二帝政の開始に伴ってイギリスへと亡命している最中の1856年に書かれた「静観詩集(Les contemplations)」からの一節。1888年にわずか13歳だったレイナルド・アーンが非常に精緻で美しいメロディーを付けました。アーンにはまだまだこれ以上に美しいメロディの傑作はたくさんあると思うのですが、もっぱらこの曲が取り上げられることが多く、彼の代表作のように評されることが多いです。確かにマディ・メスプレのような透き通った声のソプラノがひそやかに歌うこの歌を聴くと惚れ惚れとさせられてしまいますから傑作のひとつに数えることはやぶさかではありませんけれども、今やこの曲しか知られていない、とまで言い切っているレイナルド・アーン評を聞くとそれはあんまりだ、と思ってしまいます。

確かにフランスの「芸術歌曲」としての系譜を見たときには、ラロやシャブリエ、そしてこのアーンなどの作曲家はサロン風の軽い感じの曲が多いために非常に軽くしか見られないのでしょうけれども、あまりゲージュツとかにこだわらない1音楽ファンからすると、彼らの珠玉のような美しいメロディはとても素晴らしいものに思えます。スーザン・グラハムの歌ったしっとりとした味わいの歌曲集、あるいはマディ・メスプレの透き通るコロラトゥーラの声による歌曲集、いずれも実に味わい深く素敵です。
この歌にはフィッシャー=ディースカウの録音もありましたが、ちょっとこれはいまひとつでした。彼のフランスものはツボにはまった大変素晴らしいものと、何だかヘンテコな趣味の悪いものとに極端に分かれてしまうようですね。彼の歌ったアーンでは、ヴェルレーヌの詩に付けた l'heure exquise(恍惚の時)が絶妙な美しさでした。

( 2007.03.02 藤井宏行 )


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