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Du fatter ej Bølgernes evige Gang   Op.5-2  
  Hjertets Melodier
海の永遠の動きをあなたは知らない  
     心のメロディ

詩: アンデルセン (Hans Christian Andersen,1805-1875) デンマーク
      Du fatter ej Bølgernes evige Gang (1830)

曲: グリーグ (Edvard Grieg,1843-1907) ノルウェー   歌詞言語: デンマーク語


Du fatter ej Bølgernes evige Gang,
Ej Ånden,som svulmer i Tonernes Klang,
Ej Følelsen dybt i Blomstens Duft,
Sollysets Flamme mod Storm og Luft,
De Fugles Kviddren af Længsel og Lyst,
Og tror dog,Du fatter en Digters Bryst?

Der svulmer det mer end i Bølgens Gang,
Der findes jo Kilden til hver en Sang,
Der voxer Blomsten med evig Duft,
Der brænder det uden den kjølende Luft,
Der kjæmpe Ånder i Længsel og Lyst,
De kjæmpe mod Døden dybt i hans Bryst!


あなたは永遠に動く海の波を知らないのです
それに音楽の鳴り響くこの魂も
そして花の香りのように秘めた想いも
嵐と大気に向かう太陽の炎を
憧れと喜びでさえずる鳥たちのことも知らない
それでも信じるのですか、ひとりの詩人の胸の中を知っていると?

さざめく波はより一層膨れ上がり
そしてどうして歌が泉のように湧き出してくるのが分かります
花は永遠の香りを漂わせ
噴き上げる大気は燃えて立つ
憧れと願いで吐息も燃え
詩人の心の底でくすぶっているのです


この曲は歌曲集「心のメロディ」ではあまり取り上げられることの多くない第2曲です。もっともグリーグは気に入っていたのかこの曲を他のいくつかの歌曲と共にピアノ独奏曲に編曲(Op.52の中の1曲)しましたので、そちらの方ではかなり容易に耳にできるのではないでしょうか。確かに歌曲だとちょっとパッとしないところもあるのですが、ピアノ独奏ではなかなかに素敵な音楽になっているように思われます。熱い想いをぶつけるような曲想はグリーグの作風からすると少々異色ですが、これはこれで聴き応えがあります。

ただ詩の方はこの歌曲集にグリーグが取り上げたアンデルセンの4篇の中では私は一番印象深かったのですが皆さんはどう思われますでしょうか。この詩は「詩人の心 En Digters Bryst」という題でも呼ばれることがあります。ネットで調べたところ実はアンデルセンの編んだ「心のメロディ」には含まれていなくて、別のところからグリーグが持ってきたようですけれども(より詳しくいいますと、ネットで見つけたアンデルセンの詩を紹介しているサイトではグリーグの1・4曲はそれぞれアンデルセンの1・2番目の詩に対応し、2・3曲はこの詩集に含まれていませんでした。もっとも数少ない邦訳である山室静のものを見るとグリーグの4曲に対応する詩全部が訳されて含まれる8編の詩による「心のメロディ」となっておりましたので、もしかすると詩集の版の違いのようなものがあるのかも知れません。ちなみに山室訳では第3曲「君を愛す」は4番目、この第2曲は6番目で、また詩の第2連目はありませんでした。そして冒頭のゲーテのエグモントよりの引用もありません。
デンマーク語の文献をトレースできるほどの能力も時間も持ち合わせておりませんのでこれ以上の深入り調査はご容赦ください。また英訳や邦訳を何も参照できずにデンマーク語より直接訳したこの詩の第2連はそうとう珍妙な訳になっているように思いますのでご注意くださいますようお願い致します。

( 2007.02.23 藤井宏行 )


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