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Oj,vy kumushki...    
 
ああ、あんたおしゃべりさん…  
    

詩: 不詳 (Unknown,-) 
       原詩:ロシア民謡

曲: 民謡/作曲者不詳 (Folksong,-)    歌詞言語: ロシア語


Oj,vy kumushki,vy kumitesja
Kumitesja,ljubitesja.

Kumitesja,ljubitesja -
ljubite i menja.

Vy pojdite v zelenyj sad -
Voz’mite vy menja.

Vy budete tsvety tam rvat’ -
Sorvite vy i mne.

Vy budete venki spletat’ -
Spletite vy i mne.

Vy pojdete na reku Dunaj -
Voz’mite i menja.

Vy budete venki v vodu puskat’ -
Pustite vy i moj

Vashi venki poverkhu plyli -
A moj na dno poshel.

Vashi druzhki s vojny prishli -
A moj ne prishel.

On sam nejdet,pis’ma ne shlet -
Zabyl pro menja.


ああ、あんたおしゃべりさん、お友達
お友達、大好きな人

お友達、大好きな人
わたしを愛おしんでおくれ

あんたは緑の庭を行く
わたしを連れて行っておくれ

あんたはそこで花になる
あんたとわたしを摘んでおくれ

あんたはそこで花輪になる
あんたとわたしを編んでおくれ

あんたはドナウの川に行く
わたしも連れていってくれ

あんたは川面の花輪になる
あんたとわたしを放っておくれ

あんたの花輪は浮かんでるけど
わたしの花輪は沈んでいく

あんたの友達は戦争から戻ってきたけど
わたしの恋人は帰ってこない

彼はどこかに行ってしまった、手紙ももう届かない
彼はわたしを忘れてしまった

(藤井訳)

旧ソ連時代の高名な映画監督アンドレイ・タルコフスキーの代表作のひとつ『ノスタルジア』の冒頭で、ヴェルディのレクイエムとオーバーラップして印象的に用いられているロシア民謡です。映画のあらすじは以下の通り。

「ロシア(ソ連)の詩人ゴルチャコフは、イタリアに留学し帰国後に自殺した18世紀ロシアの作曲家サスノフスキーの評伝執筆の取材のためその足跡を尋ね、家族を故国に残して通訳のエウジェーニャとイタリアを旅している。彼は立ち寄った古代からの湯治場で、狂信者ドメニコと出会う。彼はこの世の終わりが来ると信じ、家族を 7年間家に幽閉して逮捕されたことがある男。そして今は、プールのような屋外の古代ローマの浴場を端から端まで、ろうそくの火を持って消さずに渡りきるという儀式に執着している。それを成し遂げればこの世界は救われると言うのだ。しかし俗物の湯治客達が邪魔をして達成することが出来ない。ドメニコの信仰の深さに共感したゴルチャコフは、何事かを成す為ローマに向かうというドメニコの代わりにその儀式を執り行う約束をする。一方、恋愛感情を持ちながらも、気難しいゴルチャコフと喧嘩別れしたエウジェーニャは先にローマに帰って別の仕事についた。そこで彼女と再会したドメニコは街頭で、この世界は精神的に病んでいるというアジ演説を始めるが、エウジェーニャはその挙動がただ事でないと感じ、ゴルチャコフにローマに来るよう連絡をとるのだが・・・」

劇的な展開がほとんどないまま淡々と進む、難解とも言われる作品ですが、その映像と音響の美はまさに映画の詩人の名にふさわしく、現代人における信仰のあり方という問いとともに、無限のイマジネーションをかきたててくれる映画です。

 さて、我が国でロシア民謡と言うと、「黒い瞳」、「カチューシャ」など、熱くメロディを歌い上げる魅力的な歌がすぐに思い浮かびますが、そういった作品の多くはソビエト時代に作曲された歌曲であり、民衆の伝承による読み人しらずの歌という民謡の定義から外れるものが多いのだそうです。それに対し、非常に単純で素朴なこの曲は、ソビエト建国以前からのロシアの民衆伝わる民謡の姿を伝えているという点で、タルコフスキー・ファン以外にも一聴の価値があると思います。

 歌詞の訳は自分では歯が立たないので藤井さんにお願いしました。「ふたりの仲良しの女友達がいて、一人の恋人(友達たち、と複数なのですが)は戦場から戻ってきたけれどもう一人のは還ってこなかった、その悲しみを歌っているのでしょうね。」とのことでした。

これまで、故国への郷愁を示すためにロシア民謡が使われていると思っているファンは多く、わたしもそうだったのですが、実は故郷に残された女が外国に出て戻ってこない恋人を嘆く歌と知り、大変勉強になりました。作中には故郷に残した妻と子供たちの出てくる夢のシーンが何度もありますが、この曲は作品中でその故郷の妻を象徴するものなのでしょう。藤井さんありがとうございました。

残念ながら我が国でこの曲のCDなどは出ていないようですが、ネット上ではこのサイトの
http://pesni.voskres.ru/index.htm
このコーナーの
http://pesni.voskres.ru/songs/esmol18.htm
に”Ой вы, кумушки”のダウンロードできるファイルがあります。

( 2007.02.20 甲斐貴也 )


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