Snezhki belye Op.104-5 Russkikh narodnykh pesen |
白い雪 12のロシア民謡 |
Snezhki belye, Pushisty pokryvali Vse polja. Odnogo lish’ ne pokryli Gorja ljuta moego. Den’ toskuju,Noch’ goroju, Potikhon’ku slezy l’ju. Slezka kanet,Sneg rastanet, Travka vyrastet na nem. |
ふわふわの白い雪が 野原を覆いつくしています。 ひとつだけ覆えないのは 私のこの深い悲しみ。 昼には嘆き、夜には苦しみ 静かに涙を流す。 流した涙は 雪を融かす。 そしてそこから草が生えてくるでしょう。 |
プロコフィエフの晩年の傑作は他の多くの作曲家と同じように故郷の民謡の編曲でした。彼の音楽はモダニズムの方に目を向けられる方の方が多いように見受けられますが、実はトロトロの民謡風メロディに溢れているという点では他のロシアの作曲家に決してひけを取っているわけではありません。いやむしろそのようなモダニストのテクニックの上に纏綿たるロシア情緒を見事に描写してくれるが故に非常に面白い音楽が生まれているように私には思えます。その意味ではこのロシア民謡集、聴いていて非常に面白いです。
この曲は中でも一番有名なものでしょうか。作曲自体は1930年代のようですが、歌曲集の中の1曲としては晩年に発表されています。穏やかな悲しみを湛えている曲ですので民謡集の他のいくつかの曲と違ってそれほど鮮烈な現代音楽的な味わいはあまり感じさせず、ひたすら伝統的な表情を美しく見せてくれています。
そうはいいながらプロコフィエフの歌曲自体が西側ではほとんど録音がなかったりしますので、この曲を聴ける機会もなかなかないのですが、中で面白いのがアメリカのソプラノ、キャロル・ファーレイが歌ったもの(ASV)、ロシア民謡なはずなのですがプロコフィエフの編曲のおかげでしょうか、現代歌曲が得意な彼女のテクニックもあいまってもの凄くモダナイズされて聴こえるのです。
残念ながらこの民謡集から2曲、この曲と第3曲の「丘の上のカリーナ」しか収録されていないのですが、突き刺さってくるような鋭利な音楽に驚かされてしまいます。このスタイルで彼のもっと激しいロシア民謡編曲を歌っていてくれたらと思うと大変残念な名唱でした。
ロシアの歌手、ヴィシネフスカヤ(EMI)やドルハーノヴァ(Russian Disc)の歌はもっと濃密で泥臭い感じでしょうか。民謡らしさではこちらが見事ですし実に美しいのですが、やはりプロコフィエフの音楽の独自性を味わうという点ではファーレイの歌の方が面白いです。
( 2007.02.09 藤井宏行 )