Behold! the sea itself! A Sea Symphony |
見よ! 海それ自身を 海の交響曲 |
Behold! the sea itself! And on its limitless,heaving breast,thy ships: See! where their white sails,bellying in the wind,speckle the green and blue! See! thy steamers coming and going,steaming in or out of port! See! dusky and undulating,their long pennants of smoke! |
見よ! 海それ自身を! そして限りなくうねるその胸の上の君の船らを 見よ!その白い帆が 風を孕み 点々と浮かんでいるのを 緑と青に! 見よ!君の汽船ら行き来し 蒸気を吐き港に出入りするのを! 見よ!暗く波打つ あの長い煙の旗を! |
4楽章からなるヴォーン・ウイリアムス最初の交響曲。ソプラノとバリトン独唱と合唱のついた交響曲というよりはカンタータのような作品です。テキストはアメリカの詩人、ウォルト・ホイットマンの詩集「草の葉」より自由に選ばれており、各楽章にはホイットマンのつけた詩から作曲者がインスパイアされたと思われるタイトルが付けられています。まず第1楽章の冒頭、高らかに合唱によって歌われる歌詞がここにご紹介したものですが、これはこのあとご紹介する第1楽章とは詩集の全く別のところから取られていますので、ページを分けてご紹介することにします。歌詞は「草の葉」13番目のセクション Song Of The Exposition.(鍋島能弘・酒本雅之訳の岩波文庫では「博覧会の歌」と訳されておりました)から。タイトルにふさわしく色々なテーマがごちゃごちゃに現れては消え、現れては消えるめくるめく長い詩です。そのほぼ中間部分、ここにご紹介しているたった5行だけが海のことを語っている部分、そこだけを作曲者が切り出して曲の冒頭に置きました。しかしそのような状況を知らずに聴くと、詞も音楽も曲の冒頭を飾るのにこれほどはないというはまり具合。雄大な海の光景が目の前に広がるかのようです。
( 2020.07.20 藤井宏行 )