Die Jugend Op.61-4 Sechs Hölderlin-Fragmente |
若き日々 六つのヘルダーリン断章 |
Da ich ein Knabe war, Rettet' ein Gott mich oft Vom Geschrei und der Rute der Menschen, Da spielt ich sicher und gut Mit den Blumen des Hains, Und die Lüftchen des Himmels Spielten mit mir. Und wie du das Herz Der Pflanzen erfreust, Wenn sie entgegen dir Die zarten Arme strecken, So hast du mein Herz erfreut, Vater Helios! und,wie Endymion, War ich dein Liebling, Heilige Luna! O all ihr treuen Freundlichen Götter! Daß ihr wüßtet, Wie euch meine Seele geliebt! [Zwar damals rief ich noch nicht Euch mit Namen,auch ihr Nanntet mich nie,wie die Menschen sich nennen, Als kennten sie sich. Doch kannt' ich euch besser, Als ich je die Menschen gekannt, Ich verstand die Stille des Aethers, Der Menschen Worte verstand ich nie.] Mich erzog der Wohllaut Des säuselnden Hains Und lieben lernt ich Unter den Blumen. Im Arme der Götter wuchs ich groß. |
私が子供の頃 人々の罵声や鞭から 幾度も神に救われたものだ それで私は安んじて楽しく 杜で花と遊び 天上からの微風と 戯れていることができた そしてあなた方は私の心を 喜びで満たしてくれた 植物たちがあなた方に柔らかい腕を拡げると その心を喜ばせてやるように 父なるヘリオスよ! そして、私をエンデュミオンのように 寵愛してくれた 聖なるルーナよ! おお、誠実なあなた方すべて 心親しい神々よ! 我が魂がどれほどあなた方を愛したか ご存知だろうか! 〔だがあの頃私はあなた方の名を 呼ぶことなく、あなた方が 私の名を呼ぶこともなかった、人同士が 知り合うときのようには それでも私はあなた方を良く知っていた 知人たちよりもはるかに 私は霊気の静謐を理解したが 人の言葉はひとつも解し得なかったのだ〕 私は葉群れそよぐ杜の 快い響きに育まれ 花々のもとで 愛を学んだ 私は神々の腕の中で人となったのだ |
ヘリオス:ギリシア神話の太陽そのもの、またはその擬人神である太陽神。昼間の天空を光り輝く四頭立ての戦車(太陽)を駆って横切る。その父とされることがあるヒュペーリオン(「上にある者」)は元来ヘリオスの枕詞であり同一の神。
エンデュミオン:ギリシア神話のゼウスの孫で、エリスの王。月の女神セレネは彼に恋して50人の娘を産んだが、いつか彼に死が訪れることを恐れ、カリアのラトモス山の洞窟で若さを保ったままの永遠の眠りにつけた。
ルーナ:月、あるいは月の女神。ルーナはローマ神話の名で、ギリシア神話ではセレネ。
本来は無題の詩で、詩集などでは第1行の”Da ich ein Knabe war”がタイトルになっています。基本的に各四行の詩ですが、第一連が七行、最終連が一行のみという変わった構成になっています。四行の連では神に呼びかけているのに、七行と一行のところでは三人称になっているので、これはプロローグとエピローグなのでしょう。また、詩集の印刷は第一連のみ、ヘルダーリンの詩によくある、一行ごとに行頭が下がっていく形にされています。
ギリシア・ローマ神話の神々への信仰の詩とも読めますが、ヘリオスとルーナは太陽と月の隠喩でもあるので、自然の恵みに神の力を感じる詩ともとれるでしょう。ブリテンは第五連と第六連を省略していますが、歌詞としては、まとまりがよくなっているようにも思います。
ブリテンの曲は軽快で愉悦感に満ち、曲集中のスケルツォ的性格を持っています。ピアノがリュートをかき鳴らすような効果を出して面白いです。
演奏はピアーズ&ブリテンの自演盤での、ブリテンのピアノが大変見事。
参考文献:『ギリシア・ローマ神話事典』(大修館書店)
( 2007.01.20 甲斐貴也 )