Vöglein Schwermut Op.62-1 Lieder um den Tod |
憂鬱な小鳥 死者の歌 |
Ein schwarzes Vöglein fliegt über die Welt, das singt so todestraurig... Wer es hört,der hört nichts anderes mehr, wer es hört,der tut sich ein Leides an, der mag keine Sonne mehr schauen. Allmitternacht ruht es sich aus auf dem Finger des Tods. Der streichelt's leis und spricht ihm zu: “Flieg,mein Vögelein! flieg,mein Vögelein!” Und wieder fliegt's flötend über die Welt. |
一羽の黒い小鳥がこの世界を飛びまわっている 哀しい死の歌を歌いながら その歌を聞いた者は、他に何も聞こえなくなる その歌を聞いた者は、その哀しみだけを聞く そして太陽を見ることももはや叶わぬのだ すべての真夜中に、すべての真夜中に 鳥は死の指の先で羽を休める 死は優しく鳥をなでて、そしてこう言う 「飛ぶがよい、私の小鳥よ!飛ぶがよい、私の小鳥よ!」 そしてまた鳥は歌いながら世界を飛びまわる |
フィンランドの歌曲王とも言えるイリョ・キルピネンはドイツ語も堪能だったようで、ドイツ語の詩につけた歌曲がたくさんあります。だからこそ早くからドイツ語圏にも紹介されてヨーロッパでも広く知られていたということもあるのでしょう。
そんな彼のドイツ語詩につけた歌曲集の中でも傑作のひとつとの誉れの高いのがOp.62の「死者の歌」です。ツェムリンスキーやベルクなどの歌曲にその名を留め、不思議な幻想生物ナゾベームの詩でSF系のファンにも名を知られていたり、またシュタイナー教育の創始者ルドルフ・シュタイナーの親友で良き理解者でもあったドイツの詩人クリスティアン・モルゲンシュテルン(1871-1914)の詩の中から死にまつわるものを拾い集めて歌曲集にしたこの作品、ムソルグスキーの「死の歌と踊り」に影響を受けて書かれたといいますが、なるほどそんな感じも頷ける重苦しさと激しさと、そしてほのかな諧謔味に満ちて大変に聴き応えがあります。
その第1曲目はひたすら暗いトーンが横溢する死の歌を歌う鳥。高音のピアノできらめいているのはこの小鳥の鳴き声でしょうか。張り詰めた緊張感の中でしかしながら静かに歌われます。
ヨルマ・ヒュンニネンの歌ったこの曲(Ondine)はその張り詰めた感じがピアノ伴奏のラルフ・ゴトーニ共々見事。この傑作の導入としては非常に印象深い出来栄えです。
あとは往年のバリトンとして日本でも名高いゲルハルト・ヒュッシュの歌を聴くことができました。こちらは録音のせいかピアノの音がくぐもって聴こえてちょっとユルい感じがでてしまったのが残念ですが歌は見事です。
( 2007.01.20 藤井宏行 )