Eingelegte Ruder Op.32-3 Vier Lieder |
置かれた櫂 4つの歌曲 |
Meine eingelegten Ruder triefen, Tropfen fallen langsam in die Tiefen. Nichts das mich verdroß! Nichts das mich freute! Niederrinnt ein schmerzenloses Heute! Unter mir - ach,aus dem Licht verschwunden - Träumen schon die schönern meiner Stunden. Aus der blauen Tiefe ruft das Gestern: Sind im Licht noch manche meiner Schwestern? |
私の置いた櫂から滴り落ちる 雫がゆっくり深みに落ちる 嫌なこともなく! 嬉しいこともなく! 痛みのない今日が流れ落ちてゆく! 下の方には・・・ああ、光の中から消え去った・・・ 私のもっと美しい時が既に夢みている 碧い深みから昨日が呼ぶ: 光の中に私の妹達がまだいますか? |
19世紀スイスのドイツ語文学の作家・詩人コンラート・フェルディナント・マイヤーの詩は、同国人であるオトマール・シェックの歌曲集『静かな輝き』(全28曲)を例外として、歌曲の作例が極めて少ないですが、プフィッツナーの四つの歌曲作品32(1923)はリヒャルト・シュトラウスの”Im Spätboot “(1906)に続く、大作曲家による珍しいマイヤー歌曲です。
櫂=舟、水、光、時間といったマイヤー詩に頻出する象徴がちりばめられていますが、漕ぐことをやめた櫂から滴り落ちるしずくに、老いと時のうつろいと、やがて尽きる命を観るという、盛期を過ぎた人間の諦念と悔恨の詩と読みました。
非常に印象的なこの詩を、28篇ものマイヤー詩に作曲したシェックが取り上げなかったのは、プフィッツナーの作例があったからでしょうか。シェックはシュトラウスとプフィッツナーの作曲した詩はどれも取り上げていません。
プフィッツナーの淡々とした無調風の曲は、20年後のシェックの作品よりもむしろモダンで晦渋な印象もありますが、この詩の孤独や諦観はよく表されていると思います。
演奏は、近年完成された画期的な歌曲全集(CPO)に、現代の優れたリート歌手ロベルト・ホルの歌唱が収められています。
( 2007.01.04 甲斐貴也 )