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富士山見たら    
 
 
    

詩: 久保田宵二 (Kubota Shouji,1899-1947) 日本
      

曲: 橋本國彦 (Hashimoto Kunihiko,1904-1949) 日本   歌詞言語: 日本語


 旅の空から 富士山みたら
 遠い故郷の あの娘をおもた

 旅の空から 見た富士山は
 遠い故郷の あの娘に似てる

 田舎育ちと 笑わいでもらお
 あの娘ぁ気高い 優姿(やさすがた)



橋本国彦という人は、前衛的とさえ言える斬新な芸術歌曲(「舞」や「黴」)もあれば、美しいメロディのシャンソネット(「お菓子と娘」や「アカシアの花」)もあり、また時代の雰囲気を捕まえた耳に心地よい流行歌(「幌馬車」や「朝はどこから」など)も書くといった具合で変幻自在の作風が大変に興味深い人です。そしてこの人のもうひとつの顔は中山晋平や山田耕筰などが推進していた新民謡というジャンルのドロドロの日本情緒あふれる作品にも面白いものをいくつも書いていたことです。
その中でもこの曲は作詞が歌謡曲詞で鳴らした作詞家の久保田宵二であること、そして橋本作品には普通どうしてもにじみ出てくる西洋風の香りがまるで出てこないド演歌になっていることが非常に興味深い異色の作品になっています。あんまり「クラシック歌曲」ファンのお気には召さない作品かも知れませんが私はたいへん楽しく聴けました。またそんなわけでか、他の橋本作品では絶妙の表現をしてくれている関定子さんのこの曲の解釈だけは私はまったくしっくりこないのです。この曲はヴェルカントがあまり感じられない藍川由美さんの歌の方が圧倒的に素晴らしく聴けます。このお二人、日本歌曲の解釈の両極端を担っているようで橋本作品に限らず山田耕筰作品などもその表現の好対照が非常に興味深いです。あとはこの橋本・山田作品を除くとあまり日本歌曲でもレパートリーが重なっていないのも面白いところ。関さんの歌う伊福部作品とか、藍川さんの歌う藤井清水とかもいいはずだと思うのですけれども...

男声では立川清登の歌の録音がありますが、関さんのと同じ理由で私はあまり好みませんでした。
むしろこんな歌ですから三橋美智也とか春日八郎とかの録音があったら素晴らしいだろうなあ、と思うのですが、この分野の方はこの歌の録音を残していないのでしょうか。あったらぜひ聴いてみたいものです。
元はこの曲、四家文子や藤原義江といったバリバリのオペラ歌手のための歌であったとは信じられない日本情緒です。

( 2007.01.01 藤井宏行 )


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