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Pesnja Mefistofelja v pogrebke Auerbakha    
 
アウエルバッハの酒場でのメフィストフェレスの歌(蚤の歌)  
    

詩: ストルゴフシチコーフ (Aleksandr Nikolayevich Strugovshchikov,1808-1878) ロシア
      Es war einmal ein König 原詩: Johann Wolfgang von Goethe ゲーテ,Faust Teil 1(ファウスト 第1部)

曲: ムソルグスキー (Modest Petrovich Mussorgsky,1839-1881) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Zhil byl korol’ kogda-to,
Pri nem blokha zhila,
Blokha... blokha!
Milej rodnogo brata ona emu byla;
Blokha... kha,kha,kha! blokha?
Kha,kha,kha,kha,kha!... Blokha!
Zovet korol’ portnogo:“Poslushaj ty,churban!
Dlja druga dorogogo
Sshej barkhatnyj kaftan!“
Blokhe kaftan? Kha,kha! Blokhe?
Kha,kha,kha,kha,kha!
Kaftan? Kha,kha,kha!
Blokhe kaftan?
Vot v zoloto i barkhat
Blokha narjazhena,
I polnaja svoboda ej pri dvore dana. Kha,kha!
Kha,kha! Blokhe!
Korol’ ej san ministra
I s nim zvezdu daet,
Za neju i drugie poshli vse blokhi v khod.
Kha,kha!
I samoj koroleve,
I frejlinam eja,
Ot blokh ne stalo mochi,
Ne stalo i zhit’ja. Kha,kha!
I tronut’-to bojatsja,
Ne to chtoby ikh bit’.
A my,kto stal kusat’sja,
Totchas davaj dushit’!

むかし王様が住んでいて
ペットにノミを飼っていた
ノミ...ノミだって!
実の兄弟以上に愛していた、
ノミを、ハハハ、ノミを?
ハハハハハ、ノミだって!
王様は仕立屋にこう言った「聞くが良い、このアホウ!
我が大切な友人に
ビーロードのカフタン上着を縫うのじゃ」
ノミにカフタンだって? ハハ、ノミに?
ハハハハハ!
カフタンだって? ハハハ!
ノミにカフタンだって?
金とビロードの服で
ノミは着飾って
お城の中ではやりたい放題だ、ハハ!
ハハ! ノミのやつ!
王様はノミを大臣に引き立て
そして勲章を授けた
そいつのあとをノミの一族は連れ立って歩く
ハハ!
王妃様ご自身も
それにかしずく女官たちも
ノミたちから大いに迷惑を受けて
生きた心地すらしなかったとさ、ハハ!
やつらに触れることさえ恐れていたし
叩き潰すなどとんでもないこと
でも俺たちゃ、咬まれたときには
いつでも好きなようにやっつけられるぜ!


ゲーテの原詩と翻訳は、それに見事な、といいますかとんでもなく奇怪な歌を付けているブゾーニのところに載せましたのでこのムソルグスキーで歌われるロシア語訳から日本語に訳したものと比較して頂ければ幸いです。大元はゲーテのファウスト第一部、悪魔メフィストフェレスがライプツィヒの酒場で学生たちと飲んで騒ぎながら歌う歌で、普通「メフィストフェレスの歌」として他にもベートーヴェンなど多くの作曲家によって歌曲にされてきています。
このストルゴフシチコフの訳もゲーテの原詩と比べてそんなにあっと驚く程の違いはありませんが、Kha Kha Khaと笑い声を随所に織り込んでいるところが面白いです。それとちょっと王様の言葉遣いが下品でしょうか。またこの歌詞には書かれてないものの歌われるときには最後にワハハハと高笑いをしてからピアノ伴奏が小気味よく後奏を奏でて終わります。ロシア出身の名バス歌手、フェドール・シャリアピンの十八番だったために有名となり、今でも「展覧会の絵」と並んでムソルグスキーの作品の中でも最も知られたもののひとつになっているのではないでしょうか。
このシャリアピンの歌はSP復刻盤として今でも聴くことができますが、私の耳では録音が悪いのか復刻の仕方が悪いのか(それとも私の耳が悪いのか)、あまり凄さを感じ取れずにおります。むしろ管弦楽の伴奏で豪快に歌い飛ばしている芸達者なボリス・クリストフの歌や、ライブで聴いてたいへん印象に残っている茫洋としたバスのエフゲニー・ネステレンコの歌い方の方により強い印象を受けています。レイフェルクスのバスも抒情味が勝ってこのコミカルな歌にしてはちょっと変わっていますが聴き応えがあります。

( 2006.12.30 藤井宏行 )


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