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Oraison du soir    
  Univers de Rimbaud
夕べの祈り  
     ランボーの宇宙

詩: ランボー (Jean Nicolas Arthur Rimbaud,1854-1891) フランス
      Oraison du soir

曲: エッシャー (Rudolf Escher,1912-1980) オランダ   歌詞言語: フランス語


Je vis assis,tel qu'un ange aux mains d'un barbier,
Empoignant une chope à fortes cannelures,
L'hypogastre et le col cambrés,une Gambier
Aux dents,sous l'air gonflé d'impalpables voilures.

Tels que les excréments chauds d'un vieux colombier,
Mille rêves en moi font de douces brûlures :
Puis par instants,mon c忖r triste est comme un aubier
Qu'ensanglante l'or jaune et sombre des coulures.

Puis,quand j'ai ravalé mes rêves avec soin,
Je me tourne,ayant bu trente ou quarante chopes,
Et me recueille pour lâcher l'âcre besoin :

Doux comme le Seigneur du cèdre et des hysopes,
Je pisse vers les cieux bruns très haut et très loin,
Avec l'assentiment des grands héliotropes.

床屋に髪を刈らせてる天使のようにぼくはふんぞりかえって
ビールでふくれあがったマグカップを手に握り
腹と首を曲げて座り、パイプを歯の間にくわえてる
空気は膨れ上がった帆のようによどんでいる

古い鳥小屋の熱を蓄えた鶏糞みたいに
幾千もの夢が静かにぼくの中で燃えている
ぼくの悲しい心は時に白木のように
この黄金色の液体の中に若さと憂鬱をしみ出させる

三・四十杯も腹に流し込み
ぼくの夢を注意深く腹の中でふやかせたあと立ち上がって
この苦い情熱をどこで放出しようかと思案する

草木の間に立つ神様みたいに安らかに
ぼくは溜まったものを空へ高々と放出する
背の高いヘリオトロープのお許しの音と共に


未成年がそんなにビール呑んでいいんかいな?と思わないでもないですが(ランボーがこの詩を書いたのは確か17・8歳の頃の筈です)、けっこう強烈な飲みっぷりです。そして豪快な放出っぷりです。ヘリオトロープの生えている草むらが降り注ぐ液体を浴びながらざわざわと答えるところなんかは実に見事な描写!(男性にしかこの感じは分からんでしょうかね)
この歳でこれだけ酒飲みの心情が分かる(そしてそれを見事に描写できる)というのも凄いことですが、表題がOraison du soir(夕べの祈り)というのも人を食っています。生真面目な聖職者が見たら目を剥きそうな詩。とは言いながらもこの詩に流れているのはほろ苦いやるせなさ、シモネタでおちゃらけた詩というわけでは決してありません。そんなあたりを気をつけて訳してみましたが、どうも訳者の品性のなさが染み出てしまったようです。
(だって情景描写がすごいんですもの...)
いずれも錚々たるフランス文学者の皆様がこの詩をどう扱っているかは皆様でご探索ください。けっこうヴァリエーションがあって面白いかも。

ルドルフ・エッシャーの作品は例によって管弦楽の不協和音の響きがキイキイ鳴る中で、怒りに満ちたテノールが叫んでいます。
中では「どこで放出しようかと思案する」の部分でグググググっと盛り上がるところが面白かったです。もう放出まで限界だったのでしょうか。

( 2006.12.13 藤井宏行 )


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