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Being Beauteous   Op.18-7  
  Les Illuminations
ビーング・ビューティアス  
     イリュミナシオン

詩: ランボー (Jean Nicolas Arthur Rimbaud,1854-1891) フランス
    Les Illuminations  Being Beauteous

曲: ブリテン (Edward Benjamin Britten,1913-1976) イギリス   歌詞言語: フランス語


Devant une neige un Etre de Beauté de haute taille.
Des sifflements de mort et des cercles de musique sourde font monter,
s'élargir et trembler comme un spectre ce corps adoré;
des blessures écarlates et noires éclatent dans les chairs superbes.
Les couleurs propres de la vie se foncent,dansent,
et se dégagent autour de la Vision,sur le chantier.
Et les frissons s'élèvent et grondent et la saveur forcenée de ces effets
se chargeant avec les sifflements mortels et les rauques musiques
que le monde,loin derrière nous,lance sur notre mère de beauté,
- elle recule,elle se dresse.
Oh! nos os sont revêtus d'un nouveau corps amoureux.

                      * * *

Ô la face cendrée,l'écusson de crin,les bras de cristal!
le canon sur lequel je dois m'abattre à travers la mêlée des arbres et de l'air léger!

雪の前には背の高い美しきもの。
死の喘ぎと鈍重な音楽の輪が立ち上がらせ、
膨らませ、震わせる、この愛されし肉体をまるで亡霊のように、
赤と黒の傷口は素晴らしい肉の中で弾ける。
いのちの本当の色彩が沈み、踊り、
そして幻を伴って立ち現れてくる、台の上で。
さらには震えが起こり、雷鳴が轟き、そして効き目の誇張された味わいが
死の喘ぎとしわがれ声の音楽と共に満たされる
この世が、ぼくたちのはるか後ろから、ぼくたちの美の母へとそれらを投げかける時に
-彼女は後ずさりし、そしてみずから立ち上がる。
おお!ぼくたちの骨は愛の新しい肉体で覆われる。

* * *

おお、この灰を被ったような顔、楯型紋章のような毛、水晶の腕!
木々や軽やかな空気をこすり合わせながらぼくがのしかからねばならない大砲!


この詩はどのくらいはっきりと日本語で表現したらよいのでしょうか。雪というのが真っ白なシーツのことであるとか台というのはベッドのことだろうなどというところまではともかくも、震えて立ち上がるものが何なのか?であるとか、ぼくがのしかからなければならない大砲とは?というところにくると、そっちの方の趣味の全くない私としましては訳していても困惑してしまうしかありません。もっと生々しい翻訳をされている先達もおられましたがそれは私にはとても無理です。そしてまた歌曲集でもこの曲は作曲者の「盟友」ピーター・ピアーズに捧げられている、という事実もなんと申しますか...
(ふたりの密やかな愛の歌なのでしょうか。いやそれにしてはあまりに露骨な歌詞と音楽ですが...)
あんまりツライので詳細な解説は門司様のサイトにお願い致しましょう。そして解説をよくお読み頂いてからもう一度この音楽をできればこのピーター・ピアーズの歌で(作曲者が指揮したバージョンならなおよろしいかも?)聴いてみられてはいかがでしょうか。音楽はこの歌曲集の中でも比較的地味で、音だけ聴く分にはあまりインパクトはなかったのですが、それでも秘めた熱情がふつふつとたぎっているようなところがあって、詩と一緒に聴くとたいへん強烈でした。最後の「水晶の腕」のところでエクスタシーを迎えて、肝心の大砲のところは自嘲するかのように静かに終わります。またそこに至るまでのメロディは私にはこの歌曲集で繰り返し繰り返し現れる「私だけがこの鍵を握っている」のフレーズに非常によく似ているように感じられます。やはりこの歌曲集全体に深い意味が込められているのでしょうかね。十分に読み取ることはできませんでしたが...

タイトルは原詩でも英語です。ロンドンで一緒に暮らしたヴェルレーヌとの交わり(文字通りの...)を意識してのタイトルでしょうか。それもありますしこの意味深長さに恐れをなしてそのままカタカナにすることにしました。その方がなんとなく「らしい」感じがしませんでしょうか。直訳すると「美しくあること」あるいはもう少し意訳して「美しくあり続けること」とでもなるかと思います。
Beauteousというのは文語であまり使われることはないようですが、ここでは非常にうまい使い方のように思えました。
日本人の感覚にしっくりくる邦題をあえてでっちあげるとすれば、Beautifulを使って「ビューティホーなこと」あたりが一番原詩の感覚に近いかも...いや「ビューティホーなナニ」の方がいいかな(ラモンHGをイメージして作りましたがあそび過ぎですか?)

( 2006.12.06 藤井宏行 )


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