Royaute Op.18-4 Les Illuminations |
王権 イリュミナシオン |
Un beau matin,chez un peuple fort doux, un homme et une femme superbes criaient sur la place publique. “Mes amis,je veux qu'elle soit reine!” “Je veux être reine!” Elle riait et tremblait. Il parlait aux amis de révélation,d'épreuve terminée. Ils se pâmaient l'un contre l'autre. En effet ils furent rois toute une matinée où les tentures carminées se relevèrent sur les maisons, et toute l'après-midi,où ils s'avancèrent du côté des jardins de palmes. |
ある美しい朝、大変に温和な人々の国で、 セレブな男と女が公共の広場で叫んでいた。 「皆さん、私は彼女を王妃としたい!」「私は王妃となりたいですわ!」 女は笑いながら震えていた。 男は友人たちに神の啓示のこと、そしてやり遂げた試練のことを語った。 ふたりはお互いを見つめあいうっとりとしていた。 実際、家々に掲げられた真っ赤なつるし物で染まっていた午前の間ずっと、 そして彼らがヤシの庭を歩み出た午後の間ずっとふたりは王と王妃であった。 |
これは非常にユーモラスな音楽が印象的です。いにしえの宮廷舞踏会の一場面のようなゆったりした、しかしちょっとキッチュなマーチに彩られて、このセレブ(もう死語だろうか?でもこのsuperbという言葉は英語にもありますがなんかこういうハズカシイ感じが私はしますので使ってみました)な男女がちょっとキテいる宣言を広場で叫ぶという情景、歌や音楽もなんとなくこれを揶揄しているような調子が感じられます。何か情景を想像するだけでも私はヘンなカップルだなあ、と思えてしまうのですが皆様はいかがでしょうか。私はちょっと前に日本でもあったあったニセ皇族の結婚式詐欺事件を思い出してしまいました。
原題のROYAUTéも英語はいうとRoyaltyとでもなるのでしょうから、日本語でも「ロイヤル」ファミリーなどと使われるようなハイソ(これも死語?)な雰囲気があってちょっと「王権」という言葉は違うような感じもするのですが結局ピンとくる適当な言葉が見つからなかったのでよく使われる邦題にしてしまいました。
この詩もいろいろな解釈がなされているようで、男の方がランボー、女の方がヴェルレーヌだ、というようなものまでありました。確かに「イルミナシオン」が書かれたのはふたりが手に手を取り合ってロンドンを旅していた時期ですからそう取ってもおかしいというわけではないですが、個人的には何が何でもヴェルレーヌのことに絡めるのはどんなものかと思えなくもありませんけれど。
もっとまともな訳詩と詳細な解説はこちらで 門司邦雄さんのサイト
( 2006.12.02 藤井宏行 )