養老 |
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老いはしつれど 何よりも 酒を好める父のあり 貧しき中に その酒を 父に勸めて 自らも 喜び暮らす樵夫(きこり)あり 今日も樵夫は 薪取り 森に分け入る 働らけば 不思議や 森を吹く風に 酒の薫ぞ 漂へる 酒こそ薫れ 森の奥 さても不思議や 怪しやと 酒の薫を たよりにて 森をば深く分け入れば 山を揺りて落つる瀧 瀧こそ落つれ 酒の瀧 嬉し嬉しや 湧き出づる 酒のありとも知らざりき 汲めども 汲めど 盡きぬ酒 父の老いをば養へと 樵夫に神ぞ賜ひける |
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( 2020.02.11 藤井宏行 )