Rastvoril ja okno Op.63-2 6 Romansov na stikhi K. R |
私は窓を開けた ロマノフ公の詩による6つの歌曲 |
Rastvoril ja okno - stalo grustno ne v moch’,- opustilsja pred nim na koleni, i v litso mne pakhnula vesennjaja noch’ blagovonnym dykhan’em sireni. A vdali gde-to chudno tak pel solovej; ja vnimal emu s grust’ju glubokoj... I s toskoju o rodine vspomnil svoej; ob otchizne ja vspomnil dalekoj, Gde rodnoj solovej pesn’ rodnuju poet i,ne znaja zemnykh ogorchenij, zalivaetsja tseluju noch’ naprolet nad dushistoju vetkoj sireni... |
私は窓を開けた、-さわやかな空気を入れようと 窓辺に膝を突き出して座ると 春の宵の息吹が顔めがけて吹き込んでくる リラのかぐわしい香りを漂わせながら どこか遠くでナイチンゲールが歌ってる 私は深い哀しみとともにその声を聴く その歌は哀しみとともに私の故郷を思い出させるのだ 懐かしき遠く離れた故郷を ここのナイチンゲールはこの土地の歌を歌うから 私の哀しみなど知りはしないだろう 一晩中そいつは歌うのだ このリラのかぐわしい香りの中で |
コンスタンチン・コンスタンチノヴィッチ・ロマノフは皇帝ニコライ1世の孫として生まれた貴族でしたが、芸術を愛し様々な芸術家のパトロンとしても活躍していたようです。チャイコフスキーにはこの人の詩に付けた歌曲集Op.63があり、全部で6曲の歌を書いています。けっこうアマチュアなりにツボは心得た歌詞で、ご覧頂いたようになかなかいい感じではないでしょうか。
(ありきたりの陳腐な内容と言ってしまえばそうではあるのですけれど)
これはロシアのナイチンゲール(夜鶯)ですから、恐らく春の終わりから初夏にかけての情景でしょう。日本の感覚でいえば梅の鶯を聞いているような感じでしょうか。花のかぐわしい香りと鶯の声を聞きながらも、心は遠く離れたふるさとに飛んでいる。古今和歌集にでもありそうな内容を濃厚なロシアの歌にしています。春の訪れた喜びにあふれてはいますが、どこか喜び切れないのはやはり異郷の地での孤独感からでしょうか。ピアノの伴奏に繰り返し現れるのはナイチンゲールの歌声でしょうね。暖かくて、そしてちょっと寂しい歌曲です。
なかなか録音がなくて、私がようやく見つけて聴けたのはバスのネステレンコのもの(Russian Disc)。ただこのしみじみとした味わいはなかなか見事でした。
( 2006.11.18 藤井宏行 )