Ah! Sun-flower! Ten Blake Songs |
ああ!ひまわりよ! 10のブレイク歌曲 |
Ah Sun-flower! weary of time, Who countest the steps of the Sun: Seeking after that sweet golden clime Where the traveller's journey is done; Where the Youth pined away with desire, And the pale Virgin shrouded in snow Arise from their graves and aspire Where my Sun-flower wishes to go. |
ああ、ひまわりよ、時のよどみに疲れ果て 太陽の足取りを数えているお前 甘い黄金の土地を探している 旅人の旅路の果てにたどり着く土地を そこへと希望を奪われた若者や 雪のように白い死装束の蒼ざめた乙女が 墓より起き上がり、憧れる 私のひまわりが行こうと願うその地へと |
非常に物憂いこの詩は「経験の歌」の方から。冒頭に低音で唸るオーボエの太い音が物憂い気持ちをいや増します。
夏の激しい陽盛りの中、時が止まりそうな風景の中で夢に見ているのは実は死者の国。悲しい音楽ではありませんけれども静けさの中に何とも恐ろしい音楽が鳴り響いています。実際には「時に疲れ」なのですが、これは夏の長い日盛りのことなので、時間が止まりそうな感覚を補うために原詩にない「よどみ」を入れました。もし人間が不死だったとすると、悠久の時間の中このヒマワリのように憂鬱な生を送るのでしょうか。
死んでしまった者たちさえも憧れるという極楽浄土が果たして幸せなところなのか?なんとも複雑なイメージを喚起する詩と音楽です。
( 2006.11.17 藤井宏行 )