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Unosi moe serdtse    
 
私の心を運び去ってください  
    

詩: フェート (Afanasij Afanas’evich Fet,1820-1892) ロシア
      Певице

曲: チャイコフスキー (Pyotr Ilyich Tchaikovsky,1840-1893) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Unosi moe serdtse v zvenjashchuju dal’,
gde,kak mesjats za roshchej,pechal’;
v etikh zvukakh na zharkie slezy tvoi
krotko svetit ulybka ljubvi.

O ditja! Kak legko sred’ nezrimykh zybej
doverjat’sja mne pesne tvoej!
Vyshe,vyshe plyvu serebristym putem,
budto shatkaja ten’ za krylom.

Vdaleke zamiraet tvoj golos,gorja,
slovno za morem noch’ju zarja.
I otkuda - to drug,ja ponjat’ ne mogu,
grjanet zvonkij priliv zhemchugu.

Unosi zh moe serdtse v zvenjashchuju dal’,
gde krotka,kak ulybka,pechal’,
i vse vyshe pomchus’ serebristym putem
ja,kak shatkaja ten’ za krylom.

私の心を運び去ってください、遥か遠くへと
月が森に隠れるようなこの悲しみの場所から
この歌声は、あなたの熱い涙に答え
愛の微笑みを穏やかに輝かせるのです

愛しい人よ!この見えないさざ波の中で
あなたの歌に身を任せるのはなんと心地よいことか!
この銀色の道を私は高く、高く昇っていくことでしょう
翼の下で揺れ動く影のように

はるか遠くであなたの歌声が消え去る、燃え尽きて
まるで夜闇が降りた海のように
そしてそこからは、いとしい人よ、どことは知れないところで
真珠の粒が零れ落ちるのです

さあ私の心を運び去ってください、遥か遠くへと
悲しみが穏やかに微笑んでくれるところへと
この銀色の道を私は高く、高く昇っていくことでしょう
翼の下で揺れ動く影のように


作品番号がついていない歌ですが、チャイコフスキーが30代の作品ということで既に「ただ憧れを知る人だけが」など初期の傑作を書いたあとの作品のようです(1873年作)。そういうわけでそれなりに完成度は高く、飛翔していくようなピアノの伴奏はメンデルスゾーンあたりの歌曲を連想させるのですが、そこに絡む歌声に仄かなロシア情緒が聴こえるのでなかなか味わい深い作品になりました。詩人のフェートは民謡詩人ということですので、こんな感じの素朴な愛の詩を書かせるとなかなか巧いですね。巧いと感じられないとすればそれは私の翻訳の拙さです。
オリガ・ボロディナのメゾが歌うチャイコフスキー歌曲集(Philips)で、ゲルギエワの力強い伴奏と共にしっとりと歌われたとても見事な歌が聴けます。チャイコフスキーの歌曲集、歌手によって選曲のバリエーションはとても広いのですがこのボロディナの録音はたいへんセンスが良く、有名曲から比較的珍しいけれども素敵なメロディの作品までバランス良く選んでいて聴き応えがあります。私もこの録音で未知の傑作をいくつか見つけることができました。

( 2006.10.31 藤井宏行 )


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