Novogrecheskaja pesnja Op.16-6 6 Romansov |
近代ギリシャの歌 6つのロマンス |
V temnom ade,pod zemlej, teni greshnye tomjatsja; stonut devy,plachut zheny i toskujut, i krushatsja... Vse,vse o tom,chto ne dokhodjat vesti v adskie predely zheny plachut,stonut: Est’ li nebo goluboe? Est’ li svet eshche tam belyj! Est’ li v svete tserkvi bozh’i i ikony zolotye, i,kak prezhde,za stankami tkut li devy molodye? |
暗黒の地獄、地の底で 罪を犯した亡者たちが苦しんでいる 乙女たちはうめき、妻たちは泣く 皆悲しみ、痛めつけられる... すべては、すべてはこの地の底の境まで便りが届かないことにある 妻たちは泣く、悲しむ、 「ここに青い空はあるの? 広い世界はここにあるの? ここには神様と、輝く聖像のある教会はあるの? それから若い娘たちが糸を紡ぐ糸車はあるの?」 |
チャイコフスキーの歌曲というのは結構な数がありますのでいろいろまとめて聴くとたいへん面白いのに出くわすのですが、中でもこいつはかなり異色の作品です。この詩の内容で何で近代ギリシャなんだろう?と謎が謎を呼びますが、何でもこれは詩人のマイコフが「近代ギリシャ歌謡集」として編纂したものの中のひとつの詩なのだそうで、詩でなく詩集のタイトルを歌のタイトルにしたことが原因なのだそうです。原詩のタイトルは調べ切れなかったのですが、恐らく「哀歌(Mirolog)」だと思います。
地獄で痛めつけられているのが女性ばかりなのもまた謎ですし、何で糸紡ぎ車なのかもよく分かりません。さらに面白いのは、この曲伴奏にグレゴリオ聖歌の「怒りの日」のメロディがそのまんまで使われており、伴奏にも歌にも最初から最後まで繰り返しこれが鳴っています。初めて歌曲集の録音から鳴り出したときはビックリしましたけれども結構味があります。ですが詞を見たら二度ビックリではありますが。1872年の作品。
2006.10.28 藤井宏行
最後の糸紡ぎ車ですが、ギリシャ神話に出てくるウリッセの妻ペネロペのことを歌っているようです。 2008.08.01付記
( 2006.10.28 藤井宏行 )