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La rançon   Op.8  
  Trois mélodies
身代金  
     3つのメロディ 

詩: ボードレール (Charles Baudelaire,1821-1867) フランス
    Les Épaves - Pièces diverses  La rançon

曲: フォーレ (Gabriel Fauré,1845-1924) フランス   歌詞言語: フランス語


L'homme a,pour payer sa rançon
Deux champs au tuf profond et riche,
Qu'il faut qu'il remue et défriche
Avec le fer de la raison

Pour obtenir la moindre rose,
Pour extorquer quelques épis,
Des pleurs salés de son front gris,
Sans cesse il faut qu'il les arrose!

L'un est l'Art et l'autre,l'Amour:
Pour rendre le juge propice,
Lorsque de la stricte justice
Paraitra le terrible jour,

Il faudra lui montrer des granges
Pleines de moissons et de fleurs,
Dont les formes et les couleurs
Gagnent le suffrage des Anges.

人は身代金を払うために
深く豊かなふたつの畝を、心の中に持って
そこを耕していかねばならぬ
理性という名の鍬を使って

ほんの小さなバラを咲かすために
ほんのわずかな麦の穂を刈るために
灰色の額の辛い涙を注ぎ
休むことなく、水やりをせねばならぬ

畝のひとつは「芸術」もうひとつは「愛」
裁判官に好意的になってもらうために
厳正な裁きを受ける
恐ろしい日が来るであろうときのために

彼には見せなくてはならぬ、収穫を
一杯の穀倉と、そして花を
その形が、そしてその色が
天使たちの賛同を得られるようなものを


これも「悪の華」の中にありますが、ボードレールの詩にしては何とも小難しいあまり彼らしくない作品でしょうか。それであまり邦訳のボードレール詩集の中でも取り上げられることも多くないのですが、これにもなぜか若き日のフォーレが曲を付けています。
曲のイメージはあのヴェルサイユのバラ、「愛それは甘く〜」の歌(冒頭のメロディがソックリです)。その感じでこの詩を歌うので、面白いのは面白いのですがなんだか陳腐な感じもして、フォーレの歌曲としては他のあまたの傑作に比べるとさほど感銘を受けるものではありませんでした。
ただ、詩はけっこう読みこんでみると面白く、楽しんで訳すことができました。

ボードレールの詩に付けた歌曲は、フランス・ハルモニア・ムンディにソプラノのフェリシティ・ロットが録音したものが廉価で出ていて、このフォーレの付けた3曲(これと「秋の歌」と「賛歌」)やドビュッシーの「ボードレールの5つの詩」、それにデュパルクの2曲(「旅への誘い」と「前世」)が皆聴けてたいへん面白いです。ボードレールに対する3者3様のアプローチ(生真面目なフォーレ、陶酔的なドビュッシー、そして力強いデュパルク)が非常に興味深いところでしょう。

( 2006.10.21 藤井宏行 )


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