The Piper Ten Blake Songs |
葦笛吹き 10のブレイク歌曲 |
Piping down the valleys wild, Piping songs of pleasant glee, On a cloud I saw a child, And he laughing said to me: “Pipe a song about a lamb.” So I piped with merry chear. “Piper,pipe that song again.” So I piped: he wept to hear. “Drop thy pipe,thy happy pipe; Sing thy songs of happy chear.” So I sang the same again, While he wept with joy to hear. “Piper,sit thee down and write In a book,that all may read.” So he vanished from my sight; And I pluck'd a hollow reed. And I made a rural pen, And I stain'd the water clear, And I wrote my happy songs Every child may joy to hear. |
葦笛吹き吹き谷間をくだる 吹くのは陽気な喜びのうた 雲の上に見たのはひとりの子供 その子は笑いながら私に言った 「子羊の歌を吹いてみてよ」 だから私は陽気に吹いた 「吹いて、吹いてよその曲をもいちど」 それで私は吹いた、彼は涙を流して聴いていた 「そしたら笛を下ろして、その幸せの笛を 楽しい歌を今度は歌ってよ」 そこで私は同じように歌った 彼は嬉し涙を流して聴いていた 「笛吹きさん、腰掛けて今の歌を書きとめてよ 本にしてよ、誰もが見られるように」 そういってその子は私の目の前から消えた 私は谷間に生えてる葦を折り取り 田舎仕立てのペンをこしらえ きれいな水にしみをつけ 幸せの歌たちを書きとめた 子供がみんなこれを喜んで聴いてくれますように |
ウイリアム・ブレイクの詩集「無垢の歌」の冒頭、序詩として掲げられているものです。この詩集自体がまだ穢れていない子供たちの純真な美しさや喜びを描いていて、読んでいてもほっとするようなものがたくさんあって、汚れちまった人間たちの姿が皮肉に描写されてなんともほろ苦い味わいの「経験の歌」と見事な対比をなしています。この詩はそんな詩がこれから紹介されるんだよ、ということをひとつの物語のようにして紹介しています。葦笛吹きは詩人自身、そしてここに出てくる子供は無垢なるものの象徴ですね。
葦笛吹きの描写ですので、ヴォーン=ウイリアムスの使った声とオーボエソロによる音楽というのはまさに絶妙のはまり方、この歌曲集の中でも一番快活で印象深い歌になりました。
この歌曲集では全体に控え目なオーボエソロもこの曲では雄弁に活躍しています。
( 2006.10.21 藤井宏行 )