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Sonnet   Op.31-7  
  Serenade for tenor,horn and strings
ソネット  
     テノール・ホルンと弦楽のためのセレナード

詩: キーツ ( John Keats,1795-1821) イギリス
    To Sleep  

曲: ブリテン (Edward Benjamin Britten,1913-1976) イギリス   歌詞言語: 英語


O soft embalmer of the still midnight,
Shutting with careful fingers and benign,
Our gloom-pleas'd eyes, embower'd from the light,
Enshaded in forgetfulness divine:

O soothest Sleep! if so it please thee, close
In midst of this thine hymn my willing eyes,
Or wait the ”Amen” ere thy poppy throws
Around my bed its lulling charities.

Then save me, or the passed day will shine
Upon my pillow, breeding many woes, -
Save me from curious Conscience, that still lords

Its strength for darkness, burrowing like a mole;
Turn the key deftly in the oiled wards,
And seal the hushed Casket of my Soul.

おお、この静かな真夜中の柔らかな香りよ、
眠りの注意深く優しい指によって閉じられる、
暗闇を求める我らの目は、光から遮られて、
神聖な忘却のうちに翳りゆく:

おお、甘美な眠りよ!もしお前が望むならば、閉ざすがよい
お前への讃歌のさなかに眠りたいと願っている瞳を、
あるいは「アーメン」の祈りを待ってお前のケシを撒くがよい
私のベッドのまわりにお前を呼び寄せる施し物を。

そしてわれを救いたまえ、さもなくば過ぎ去った昼間の記憶がまた光り出し
枕の上で、多くの苦悩が血のように噴き出すであろうから-
われを好奇に満ちた良心から救いたまえ、そいつはいつも支配的なのだ

その闇へと向かう力は まるでモグラのように隠れているのだ。
だから油を差した鍵穴に上手に鍵をさして回し
静かになった私の魂の小箱に封をしておくれ


最後の歌は安らかな眠りへの賛歌です。ホルンは登場せず弦楽伴奏だけで静かに歌われます。
非常に意味が取りにくい詩でしたので間違った訳になっているところが多々あるかと思いますし、これを読まれてもさっぱり意味が取れないとご不満の方も多いかと思いますが、気が付いた折に都度修正していきたいと思いますのでご了承ください。まずは「注意深くやさしい指」というのは眠りを擬人化しているのでしょう。だからそれが閉じているのは「我らの瞳」ですね。ここでなぜ「私の」でなく「我らの」となっているのかは分かりませんでした。眠ることによって苦い思い出から逃れることができる、というのがこの詩のメインのテーマのようで、恐らく「神聖な忘却」というのもそのことなのでしょうし、「過ぎ去った日々が光りだす」というのも眠れないために頭の中に浮かんでくる昔の後悔のことを指しているのだと思われます。その眠りに抗うのが「好奇に満ちた良心」であり「もぐらのように隠れている闇へと向かう力」で両者は同じものでしょうか。最後の小箱に鍵をかける表現でやすらかな眠りを表しているところはなかなか良いですね。

ひそやかにこの曲が閉じられたのち、最後のエピローグはホルンのソロで奏でられます。夜の静寂にこだまするようなひめやかなその調べはこの眠りのソネットに答えるかのように安らか。静かにこの美しい曲を締めくくります。(2006.10.09)

( 2007.09.15 藤井宏行 )


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