Sur l'herbe M.53 |
草の上で |
L'abbé divague. - Et toi,marquis, Tu mets de travers ta perruque. - Ce vieux vin de Chypre est exquis; Moins,Camargo,que votre nuque. - Ma flamme . . . Do,mi,sol,la,si. - L'abbé,ta noirceur se dévoile. - Que je meure,mesdames,si Je ne vous décroche une étoile. - Je voudrais être petit chien! Embrassons nos bergères,l'une Après l'autre,Messieurs,eh bien? Do,mi,sol. - Hé! bonsoir la Lune! |
僧正はろれつが回らぬ、あんたもだ、侯爵 カツラを曲がってつけておるぞ -このキプロスのワインは絶品じゃ ただカマルゴよ、お前のうなじほどではないぞ -いとしい人よ、ド・ミ・ソ・ラ・シ -僧正どの、あんたの地が出たぞ -死なせてくだされ、お嬢様方、もし 私が皆様のために星を捕まえられなければ! -もしわたくしめが子犬であったらなあ! 羊飼いの娘たちを順番に抱きしめようでは ありませんか、よろしいか、皆さん? ド・ミ・ソ、はい、こんばんはお月様! |
モーリス・ラヴェルはフォーレやドビュッシーと違って、フランスの作曲家ならそれこそ猫も杓子も曲を付けている感のある詩人ポール・ヴェルレーヌにはほとんど興味を示さなかったのでしょうか。私の知る限りわずかに2曲しかヴェルレーヌの詩による歌曲は書いていません。ですがここで選ばれた詩はまさにラヴェルに打ってつけのもの。絶妙の精緻さとユーモアでこの不思議な詩を見事な歌にしています。1907年の作品です。
これはヴェルレーヌの「艶なる宴」からで、なんだか意味はよく分かりませんが、僧正と侯爵がへべれけになって互いにタワゴトを叫んでいる感じは実に面白いです。こういう一癖もふた癖もあるような詩にはラヴェルのメロディを付ける腕前は冴え渡り、小気味良いフランス語の響きと共にたいへん面白い歌になっています。歌詞の方も最後のお月様へのあいさつのところはなんだか宮尾すすむかチャーリー浜の芸みたいになってしまいましたが、まあそういうコミカルな歌だからいいですね...
ここで出てくるカマルゴというのは18世紀のパリ・オペラ座の花形バレエダンサーだったマリー・カマルゴ(1710-1770)のことみたいで、この詩に出てくる侯爵(ルイ・ド・ブルボン)の愛人だったのだとか。
( 2006.09.08 藤井宏行 )