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Colloque sentimental   L 104  
  Fêtes Galantes I
わびしい会話  
     艶なる宴U

詩: ヴェルレーヌ (Paul Verlaine,1844-1896) フランス
    Fêtes galantes 22 Colloque sentimental

曲: ドビュッシー (Claude Achille Debussy,1862-1918) フランス   歌詞言語: フランス語


Dans le vieux parc solitaire et glacé
Deux formes ont tout à l'heure passé.
Leurs yeux sont morts et leur lèvres sont molles,
Et l'on entend à peine leurs paroles.

Dans le vieux parc solitaire et glacé
Deux spectres ont évoqué le passé.
-Te souvient-il de notre extase ancienne?
-Pourquoi voulez-vous donc qu'il m'en souvienne?

-Ton coeur bât-il toujours à mon seul nom?
-Toujours vois-tu mon âme en rêve? - Non.

-Ah! Les beaux jours de bonheur indicible
 Où nous joignions nos bouches: - C'est possible.

-Qu'il était bleu,le ciel,et grand l'espoir!
-L'espoir a fui,vaincu,vers le ciel noir.

Tels ils marchaient dans les avoines folles,
Et la nuit seule entendit leurs paroles.

ひとけのない凍てつく夜の公園を
ふたりの影が通り過ぎて行った
瞳には生気なく 唇はゆるみ
言葉もほとんど聞き取れない

ひとけのない凍てつく夜の公園で
ふたりの亡霊は昔を思い出している
-ぼくらのなつかしい陶酔の日々を覚えてるかい?
-どうして私に思い出させたいの?

-ぼくの名前を聞くと今でも胸がときめくかい?
 いつもぼくを夢に見るかい? -いいえ

-ああ、言い尽くせない幸福の日々よ
 ぼくらが初めてくちびるを合わせた日!-そうだったかしら

-なんて空が青かったことか。ぼくらの希望は大きかったことか
-希望は逃げ去り、破れ果てたわ。黒い空へと

こんな風にふたりはカラス麦の中を歩いて行った
夜だけがふたりの言葉を聞いていた


なんだか切ないですね。私も読みながらこういう浮きまくった熱情を振りまいていたのであろう
若い頃を思い出してたいへん苦い気持ちになってしまいますが、まだ熱い男と冷め切った女、
遠からず熟年離婚でもしそうなふたりの会話です。女性の側のキツーい応答がひときわ胸にささってきます。
(もうふたりとも死んじゃってるみたいなので離婚もなにもないのでしょうけれど。詩の会話自体はどちらが
 男でどちらが女かははっきりしていないようですが、私にはどう読んでもこの訳のような状況しか思い浮かび
 ませんでした。あなオソロシヤ...)
実はドビュッシーのこの「艶なる宴」、第1集の3曲と第2集の3曲は対をなしていて、この曲では
第1集第1曲の「ひそやかに」のピアノ伴奏で表現されていたナイチンゲールの声のエコーが聴こえます。
あの不安に満ちたときめきの歌と対になってみるとこれはかなりの皮肉っぽくもなってしまうのですが...

( 2006.09.08 藤井宏行 )


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